2009年 08月 03日
ヴェネチアにて現代アートの殿堂とも言えるビエンナーレより見たかった展覧会"In-Finitum"。 Infinitumとはラテン語にて無限の意味を指す。なぜIn-Finitumとハイフンをつけたか。 展覧会の紹介サイトの主旨にもあるように、Finitumである完成、完璧なるものの中にあるIn-Finitum無限なるものという概念を打ち出したかったからである。 Infinitumとは無限であるとともに未完という意味も内包する。芸術家がいかなる理由か未完のまま筆を置くその瞬間。未完にある無限、無限であるからこそ未完という芸術の表裏一体の存在理由を語るかのようである。 目にすることができない芸術のエッセンス。人間の歴史が育んで来た精神世界の三角の三点である 宗教、芸術、科学のうち、その発生の源と美の真義などが複雑に絡み合い、そして無限大に広がる領域を持つものであるのが芸術と思う。宗教も科学も人間の存在の理由を見いだそうとする営みとして人間史とともに発展した。宗教は神による、科学は物理による解答を出そうとする。しかし生と死という概念、自然と宇宙と人間という計り知れない世界をすべて含み広がるのは芸術であろう。一筆で描いた白黒の円形も色彩豊かな風景画も、または一色の抽象画面もひとつの芸術の領域に共通する美学、いや精神世界があるのである。この展覧会の監修者のひとりであり、というより作品の選択はほとんど彼によると思われる古美術商でありデザイナーであるベルギー人のAxel Vervoort氏の美学は実は日本の表現世界にある道に通ずるようである。「空」や「間」という概念にある美の無限はこの展覧会の展示作品のすべてをつなぐ縦糸である。 一階から4階までに渡り繰り広げられる美の神殿はその厳かな最低限の照明のおかげもあり、まるで暗闇に光をともす芸術の無限をそのまま表すかのようである。 2階は特に展覧会の会場であるフォルトゥニー美術館の前の住人である芸術家のフォルトゥニー自身のアトリエをそのまま残した空間であるので美の響宴はさらに厚みを増す。 屋敷も展示作品に劣らず素晴らしい。 この神殿の中で過ごす数時間はなぜか日常から離れた超現実の不思議な時間経過があるようである。太古の記憶を呼び起こさせるような感覚である。 最上階は天井裏であるのか、こつぜんと光と風が通り抜けるような爽やかな開放的な空間である。 そしてその解放された空間の中に置かれたのは「侘び」の間。アクセル氏の協力者である日本の 建築家Tatsuro Miki氏のデザインであると思われる。この茶の湯の庵を思わせる仕切られた空間には 間、空、美の小宇宙が展開する。 古いもの、新しいもの、東洋の美、西洋の美、抽象や具象ー常識による一見した「違い」がIn-finitumという縦緯糸により広大で深淵なひとつの美の綾となるとき。 未完と完結の狭間に危うく存在する無限なる美。
by jamartetrusco
| 2009-08-03 23:37
| Arte (芸術)
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