2006年 09月 03日
ArT RANDOMという80年代に京都書院が出版した美術家100人全集を覚えておられる方もいるだろう。80年代にやはり京都書院が出版したすぐれたシリーズ「陶」100選とともに貴重な美術書であると思う。文章は最小限度に押さえ作品画像中心のほんの1cmほどの厚みのハードカバー本である。今でも再販されているのか、それとも絶版なのかわからない。作家の選択もなかなかマニア向けである。その中で随分前にたまたま目にとまりその作品画像が気に入って買ったVincento Galloの作品集。 この作家がミュージシャン、モデル、俳優、映画監督で常なる暴言と悪態で有名なヴィンセント・ガロであると知ったのはかなり後になってのことである。 ガロは1962年、アメリカのニューヨーク州バッファロー生まれである。最近では、2003年のカンヌ映画祭にて映画祭始まって依頼の最悪な映画と悪評されたThe Brown Bunnyを出品。その露骨な性描写は観衆のブーイングを浴びた。とにかくあまり良い評判のたたない人物、愛すべき人物とは正反対の性格のようである。その言動を見聞きすると強烈な自我の顕示とナルチシズムのもとで人間侮蔑を生き甲斐にしているかに見えるガロである。 そんな人物とは裏腹に、この絵にある古色蒼然としたローマやポンペイのフレスコ画を思わせる繊細で崩れるばかりの微妙な色彩と形の美はなんだろう。ほとんどが静寂な時空間におかれた果物などの静物画である。このような幽やかな世界を作り出したのがあの過激で露骨なガロである事自体が不思議である。名前からもわかるように両親はもともとシチリアからアメリカに渡って来た移民である。その美的色彩感覚はやはりイタリアの血の中にある何かなのか。そして好んで描く静物の葡萄は故郷シチリアへの郷愁なのか。 残念なことに彼は90年代その絵画作品が絶賛を浴びている真っ最中に画家中止宣言をする。それも相変わらずの侮蔑の言葉を残して。 しかしこの細やかな線と淡い色調を見ていると、本人の悪魔の仮面の背後にある深層心理、外には出さない真実の不思議な世界が見え隠れしているのかもしれない。
by jamartetrusco
| 2006-09-03 00:15
| Libri (本)
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