トスカーナ 「進行中」 In Corso d'Opera

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2009年 02月 02日

Teatro del Silenzio ー静寂という劇場

トスカーナのピサ圏内にある小さな町Lajatico-ラヤーティコ。
エトルリアの古代都市として有名なヴォルテッラの近郊であるこの町はある人物が生まれていなければ世界に知られることもなかっただろう。
この町に生まれたのはアンドレア・ボッチェリ。声楽の歌声をポップ音楽に取り込んで一躍有名になったテノール歌手である。日本でも最近声楽家の歌う「千の風になって」がベストヒットとなった記憶も新しい。こういった一連のオペラ歌手が歌うヒットソングの先駆けであるのがこのボッチェリである。94年にイタリアで長く続いているサンレモ音楽祭の若手部門にて優勝して以来、翌年の同音楽祭メイン歌手部門にて歌った"Con te partirò"は4位に留まったものの世界空前のベストセラーとなった。本人はもともとオペラ歌手を目指していたのだが、たまたまイタリアの人気ロック・ミュージシャン、Zuccheroと、今は亡きパバロッティに見いだされポップ音楽の部門でデビューしたのである。その後さまざまな歌曲の舞台でも歌っている。

彼が2005年、自身の生まれた地に貢献する意味もあり提案したのがTeatro del Silenzio、静寂なるシアター・プロジェクト。
イタリアでは近年、ますます劇場の影が薄くなり、イタリア独特の古い佇まいに見合った静けさではなく騒々しい音に満ちた国になりつつあることへの反抗も含めて、小さい頃からの音楽に対する情熱を具現化するために彼自ら企画した野外劇場創設プロジェクトである。

劇場といってもあるのは果てしなく広がるトスカーナの大地。季節ごとに変化する大地の色。半円形の石の座席と緑の中に静かに広がる円形の湖水である。湖水の真ん中には協力者の作家達による彫刻が選ばれ置かれる。去年はマリオ・チェロリ、過去にはアルノルド・ポモドーロ、イゴール・ミトライなどが協力している。

この土曜日久々の快晴にてこの地域を散策していてたまたま遭遇した。
毎年7月にたった一度だけのコンサートを提供する舞台である。
それ以外はただ自然の背景に静かに佇むのみの劇場である。
目の不自由なボッチェリであるからこそ、聞こえてくる静けさである。
それ故生まれた名称に違いない。
この場所の前に立ってトスカーナ独特の美しい丘陵地帯のゆるやかな風景に見とれて
いたが、気がつくと実に静かなのである。人間の出す音、雑音が全く不在である。
毎日の生活がいかに雑音に満ちているかに改めて気がつくこの不思議な空間。
寂とした空気に囲まれてぽつんとある劇場。静寂さの意味と価値を知らせてくれる
場所である。

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by jamartetrusco | 2009-02-02 19:17 | Paese (土地柄)


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