トスカーナ 「進行中」 In Corso d'Opera

jamarte.exblog.jp
ブログトップ
2010年 03月 12日

再発見されたジョット

フィレンツェにあるイタリア・ゴシック建築を代表するフランチェスコ会の最大のバジリカ(聖堂)であるサンタ・クローチェ。もともとはサン・ロレンツォ教会と同様のピエトラフォルテによって被われた建築で、現在正面を飾る大理石肌の装飾は実は19世紀後半に追加されたもの。シエナやオリビエート、もしくはフィレンツェの大聖堂を元にしている。故にこの聖堂の様式とはかなりちぐはぐであると言える。

中にはダンテ、ガリレオ・ガリレイ、ミケランジェロ、マキャヴェリなどの偉大なフィレンツェ人の墓碑がある他、16の礼拝堂がある。このひとつであるペルッツィ家の礼拝堂にある初期ルネサンスの巨匠ジョットによるフレスコ画「洗礼者聖ヨハネ」と「福音書記者の聖ヨハネ」に関してつい数日前大きな発見が発表された。このフレスコ画は後のミケランジェロなどに大きなインスピレーションを与えた新しい表現と言われるものであるが、14世紀に描かれた当時から現在までの時の経過によって後期の修復や汚れなどのおかげで幕がかかったようなぼんやりした表現のみ残っており、当時の面影はない。

ところが今回ロサンジェルスのゲッティ美術館とフィレンツェ修復局との協力にて初めてUVライト、紫外線の光を使った照明器具を当ててジョットの描いた人物像の全体像が浮かび上がったのである。肉眼でみると輪郭などはっきりないフレスコ画の色彩が紫外線の元に消え去りそこにくっきりと生き生きとした表現の血の通った人物表現が現れる。確かに両者を比べるとその違いは明白である。ミケランジェロが眺めた当時はこのジョットの肉迫した表現が見られたのであろう。(掲載画像の内、上が現在の状態、下がUV光のもと)

とは言えこの発見、UVライトを当てることのよってのみ見ることができるのであるから、一般の鑑賞者にはなんの恩恵もない。そして当時のジョットを再生しようと修復など開始したらまたこのフレスコ画が何年間垂れ幕と鉄棒の作業台の下に隠れてしまうかと思うと、修復作業も善し悪しである。

さらに思うに現在のテクノロジーを使って長い年月の汚れと質の悪い修復を取払い元の状態を戻そうという意図のもとに修復されたシスティーナ礼拝堂のミケランジェロの天井画や最後の審判、レオナルドの最後の晩餐などの結果を見ると現在の修復がどれほど良い結果を後世にもたらすか疑問である。というのもどんなに修復技術が進んだと言われても修復に使用される原材料の質は現在の方が劣っているのは間違いないからである。現在手に入る材料にてルネサンス期と同じ色彩と質を出すことなど到底無理にきまっているのだから。

人間の作り出したものは時のなすがままに触らず置いておいたほうが好ましいのでは、どちらかということ修復反対派に属する自分である。


f0097102_18282493.jpg


f0097102_18284951.jpg

[PR]

by jamartetrusco | 2010-03-12 18:36 | Arte (芸術)


<< 春を感じる      芸術考 >>