2010年 06月 18日
イタリア、トスカーナにある修道院。屋根が歴史とともに失われ 空に直につながるその建築の持つ超現実的空間は、人間の作為と 自然のなすがままの姿故に信じられない程の力を持つ。 サン・ガルガーノの修道院に近づくと空気が凛としてくるのが わかる。 最近では歌劇上演や観光客向けのカフェやら新たに植えられた 取ってつけたような杉並木やらでややその神聖さは失われつつ あるものの、やはりこの地は独特の宇宙的静寂感を放つ。 交通の便が悪いこともあって訪れる観光客はそうはいない。 アレと知り合って最初に連れていってくれた神秘の場所である。 私のイタリアでの道標である。 その時8月であったが人影もなく時を超越したようなこの空間は 不思議な精神性を持って包み込んでくれた。その美しさは時とともに 失われることはない。 12世紀の聖人、サン・ガルガーノに由来するロマネスク様式の 円型の礼拝堂が高台にある。アーサー王の伝説のような石に刺さった 刀剣があるので有名だが、それよりも丸天上を飾る2色の渦巻き模様 の美しさが圧倒的である。 その後に修道院建築を目指して築かれたのがこのゴシック様式の建物である。 14世紀に入って黒死病やらなにやらで修道院は僧侶の数もたったの 一人となり、じょじょに朽ち果ててしまった。 しかしこの存在感はなんだろう。豪華絢爛なバロック建築やローマ 法王の殿堂サン・ピエトロ、またはフィレンツェの大聖堂もこの草の 中に静かに佇む石造りの存在には叶わないように思う。 その中に立つと声を挙げてはいけないような、沈黙とともに瞑想の領域に 導かれる。自身の存在を見つめるためにあるかのような。 夏の暑さもすーっと過ぎていくような静けさである。 神聖な場所の力である。 タルコフスキーがイタリアに移って制作した「ノスタルギア」(ロシア語で はそう発音する)の舞台として選んだのは当然であろう。 トスカーナにて数少ない畢竟の地、心の拠り所の聖地である。
by jamartetrusco
| 2010-06-18 04:26
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