トスカーナ 「進行中」 In Corso d'Opera

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2010年 12月 16日

美と醜の表裏一体

美と醜はときどききわどい一線を画しながら表裏一体の様相を持つ。
アンセルム・キーファーの作品を前にすると常にそういった感慨が生まれる。
彼の作品はとにかく巨大である。ヴォイスを師匠としたことが一目瞭然に理解
できる物体と観念の合体した物質的、物理的作品群。枯れ木から落ち葉から
土から金属から様々な有機物が各々の発言力を持って画面や空間を埋め尽くす。
静けさの中に喧噪が隠れているような表現。その白黒の画面には血のような
赤が点々とする。モノクロームの世界に滴る色。傷口から血を流すかの
ような雪に被われた自然の荒野原。
人間の極致である死を直視するその視線。
美と醜が表裏一体に顕され、人間の本質を見極めようとする。
彼の作品に明るさはない。デューラーのメランコリーが漂う。
同時にドイツ美学に欠かせないフリ−ドリッヒの幻想的ロマンチシズムも潜んでいる。
これだけ大きな彫刻やキャンバスを制作する作家のエネルギーは一体なんだろう。
作品は収まる所を探しているようには思えない。
美術館での展示にすら大きすぎるかに見える作品である。
作家の表現の力が留まるところを知らずに与えられた十分に大きい制作空間を
100%駆使して実現された物質的絵画。箱の数々。
聖書の1ページを開く行為に似た、極めて抽象表現的な作家の心の記念碑。

ニューヨークにて見た彼の最新の作品群。ガゴーシアン・ギャラリーでの個展
あった。

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by jamartetrusco | 2010-12-16 07:15 | Arte (芸術)


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