トスカーナ 「進行中」 In Corso d'Opera

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2011年 06月 18日

行方不明のアーティスト

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ニューヨークのセントラル・パークの5番街の角に小さな噴水広場があるがそこに
Ai Wei Weiの十二支のブロンズ彫刻が5月の快晴の空の下展示されているのを
見る機会を得た。
この動物の頭部の彫刻群はこの後ロンドンのサマセット・ハウスにて6月26日まで展示される。

すでにこのブログでもロンドン、テートモダンでの「ひまわりの種」
インスタレーションで紹介したことのある中国の作家である。
中国政府のあり方にもしばしば批判を含めた言論をかわす作家であり、作品に中国の
歴史と文明への暗喩が多いことから、現代中国の第一人者の作家として西欧の
現代美術界での彼の動向への関心度は高い。
毛沢東が自分を太陽とし、中国国民が太陽の向く方向へ向くひまわりである
と喩えたということになんらかの申し立てをしたい意味もあった「ひまわりの種」インス
タレーションは景徳鎮の無名の焼き物職工たちを多数動員しての数年にわたる大作業で
あったことや本来はひまわりの種の敷き詰められた会場を歩き、手で触ることが趣旨であったのに、
展示開始1週間にして磁器性の種を踏みつけることから立ち上がる粉塵が人体に害を及ぼすという
衛生法により、遠くから眺める展示となってしまったといういきさつもあり、常に話題を呼んだ
ものである。


さてこのAi Wei Wei が4月半ばに香港空港にて中国政府当局にとらえられて行方不明になって
からすでに2ヶ月が経った。当局は身柄の拘束は単なる脱税のためと言い逃れをしているらしいが
それが少しの事実が混じっているにせよ、真の拘束の意味は彼の言論、行動があまりにも影響力
があるからだろう。そして中国政府がことさらに敏感に反応する世界の人権問題への関心。
ノーベル平和賞に輝いた中国の人権運動と民主化を訴える活動家,劉暁波 (リューシャオボー)
も投獄中での受賞だったことは記憶に新しい。
そしてこのことへの反感から授賞式に出席した国への報復など告げた政府の過激な態度も
西欧では多いに批判をもって受け止められた。

今回のこの現代作家の拘束。西欧の美術界では解放を求める大きな運動を引き起こしている。
ちょうど5月半ばよりロンドンの大手の画廊Lisson Galleryにて個展が開催中であり、作家不在の
展覧会開幕となった。開始前に作品展示作業を見せてもらったが、大きな中国の箪笥をいくつも
あわせてそこにある開口を覗くと三日月が見えるといったものや、中国の壷に原色のペイント
で彩色して多数並べたりといった規模は大きく、概念を物を通して即物的にとらえた主張の
はっきりしたものである。しかしその背後に中国文明への微妙な詩的言及がある。
自らの生まれた国の歴史と文明、そして現在の状況を直視する彼の態度は単なる自国政府へ
の批判だけの意図ではなく、作家が自身の奥底を見据えようとすると直面せざるを得ない
当然なる帰結であろう。

早く解放されてまた活動してほしい。
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by jamartetrusco | 2011-06-18 17:50 | Arte (芸術)


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