トスカーナ 「進行中」 In Corso d'Opera

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2011年 11月 07日

根付けに関わる家族史

根付けの250以上の数に渡るコレクションを日本に長く住んだ大叔父の死より
受け継いだことをきっかけにそのコレクションにまつわる家族の歴史を解き明かして
行くというやや探偵小説的な面白さを備えるとともに、巨大な富と文化背景を
持ちながら大きな歴史の流れに巻き込まれ悲劇的結末を迎えるユダヤ系ロシア
の家系の雄大な歴史ドキュメンタリーでもある。オリジナルタイトルは
The Hare with Amber Eyes
琥珀色の目を持つウサギ。ウサギの形の根付けの一作品から来た題名である。
著者はイギリスで活躍中の陶芸家のEdmund de Waal
BBCの作家紹介の番組は一見あり。

私も仕事柄会ったこともあり、もの静かな中に不思議な力を潜めたような知性あふれる
好青年である。
小さい頃から焼き物作りに惹かれて親方に師事して学び、焼き物の伝統豊かな
日本にも赴く。そしてその後イギリスの名門大学で学ぶ。文学的才能があるため
焼き物の季刊誌などにしばしば投稿したり。またバーナード・リーチの本を出したり
作家としての頭角も常日頃見せていたのだが、今年4〜5年かけて調査し暖めた
本を今年出版、またたくまに自叙伝としての賞を受賞し、イギリスでベストセラーとなった。
というわけで私もさっそくロンドンにて購入して読んだわけである。
久々に良い本を読んだという感じで、読み始めたら止まらない本である。
話の面白さと歴史や家族史への鋭い観察力と文学的叙述。
とにかく読み応えのある素晴らしい本である。
数奇な運命を歩んだ264個の根付け作品へ思いはどんどん馳せて行く。
日本語に訳されることは時間の問題だろう。イタリア語版もつい先日出版されたばかり。

19世紀半ばのジャポニズムあふれるパリの文化背景、世紀末の文化円熟期のウィーン、
オーストリアハンガリー帝国全盛期から第一次大戦を迎えてのその衰退、ナチス台頭
などなど近現代史がそのままエドムンドの先祖の歴史を通して如実に語られていく。
歴史の重み、家族の重み、そして一人の人間の生き様はその中で弱くまた強いもの
であることをつくづくと実感する本である。

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by jamartetrusco | 2011-11-07 17:16 | Libri (本)


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