トスカーナ 「進行中」 In Corso d'Opera

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2012年 01月 17日

豪華客船の悲劇

日本でもイタリア西岸、トスカーナのジリオ島沖にて沈没した豪華客船のニュースは伝わっていると思う。船長は業務上過失致死の容疑で逮捕されて取り調べが続いているが、毎日様々な証言や残っている通話情報などから驚くべき実態が見えてきている。

そもそも事故はこの豪華客船が乗客、乗組員合わせて4,000人以上の人々を乗せてローマのチヴィタヴェッキャを出発した13日金曜日の夜起こった。13日の金曜日というのも縁起が悪い出発日。さらには進水式のときのシャンペンボトルがぶつかっても割れなかったというジンクスまでしょった船でもある。
順調であれば夜8時半頃に島のそばを通って北へと進行するはずだった。ところがこの船長、以前も何回か島に滞在する観光客と乗船客を楽しませるために島の沖近くを通って汽笛をならすというサービスをしていたようである。そんなことをすること自体言語道断であるが、島の村長がサービスに対してお礼状までこの船長に出していることが判明しているくらい。ここまではどっちもどっち。

その先が問題だ。今回乗組員である給仕長がこの島の出身で両親に挨拶する意味でまた島に近づいて汽笛をならしてあげよう、という船長の提案。料理長の両親は事故後、当然のことながら、私たちが頼んだのではない、と申し訳なさそうに弁解していたが。このために安全進路を制御する操縦装置も手動に切り替えて勝手に選んだ航路を進んだ結果、誤って島に近づき過ぎてしまい、岩に座礁したというわけである。この島のまわりはごわごわと切り立った岩場で有名で、この辺の漁師などはだれでも知っていること。何回も航海している船長が知らないわけがないのである。事故後、この岩は海洋地図には載っていなかった、なんてしらじらしい嘘まで発言している。

この船長の「するべからず行為」が分かってきて開いた口がふさがらない実態が発覚。
1)まず乗客がすべて避難するまで船に残らずさっさと逃げてしまったこと、船長は最後まで乗客乗組員の安全を守る義務があることは言わずもがな。
2)沿岸警備隊の隊長がその後何回も船に戻るように警告したにも関わらずモ戻らなかったこと、そして島にある唯一のタクシーを呼びつけて近間の街まで逃げたこと。
3)最初に座礁して船のエンジン部に水が溜まりだした8:30過ぎに船長以下の副官達が数回にわたりはやく船を捨てて避難するように促したにも関わらず船長はその後一時間以上もそれを許さなかったこと。最初の警告で避難を始めていたら船もまだ傾きだしておらず、救命ボートも正常に使えてすべての人が難なく避難できたということ。船が傾いてしまったのでボートをおろすことが不可能になり、最後の手段で傾いたすべりやすい船体から死ぬ思いでロープ伝いに降りた乗客達。冷たい海に飛び込み命からがら岸まで泳いだ人もいた。
4)乗客の証言から船長はどうも酔っぱらっていたらしいこと。そして事故後携帯電話で豪華客船の幹部と弁護士らしき相手とずっと話していたということ。自分の進退如何しか頭になかったのだろうか。

すでに以上の考えられない失態が判明してきている。この船長、以前にもマルセイユでの荒れ海の中、皆の反対を押し切って豪華客船を出したという前例も。航海の職務につくのは海洋文化のあるナポリとジェノバ出身が多いと言われている、ナポリ近郊のサレルノ出身のこの船長とジェノバのあるリグーリア圏の船長との対立も常にあったそう。
要するにかっこつけるのが好きで、ぎりぎりの危険のスルリを楽しむナポリ気質旺盛の船長だったとことがだんだんと分かってきている。こういう人物は普通に生活している分には極めて人間的で、人懐っこく、愛らしい人物であることは多いし、海の男ならではの荒っぽさと気質の良さなどあるに違いない。彼も自分のかっこつけで
こんな重大な事故を引き起こして大パニックとなり対処不可となったという人間の弱さも十分理解できる。
実際彼を知る住民達は「良い人なのに」と驚きを隠せない。
根本的に問題なのはこんな無責任な多くの人の命を危険に犯すようなことを平気で行ってしまう人が大きな客船の船長になれるということだ。月給12,000(120万円)ユーロという高給でもあると聞く。
イタリアの制度自体の問題、国のイメージ失墜明らか。
なくなった方々へどう謝罪できるというのだろう。

さらに心配なのは座礁した船の燃料が海に流出して多大な海洋汚染を生み出す危険性である。
今週末から海が荒れてくるというからどうなることか。
私もこの島を訪れたことがある。素晴らしい海と自然に満ちたところ。
トスカーナの沿岸のオアシスが破壊されないように祈るばかりである。

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by jamartetrusco | 2012-01-17 22:50 | Paese (土地柄)


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