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トスカーナ 「進行中」 In Corso d'Opera

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2012年 02月 14日

San Valentino

2月14日に祝う恋人の祭ヴァレンタイン・デーの起源は案外曖昧な伝説にまつわるものだ。
もともと聖ヴァレンタイン自体の存在がはっきりしないのである。
イタリアの名称サン・ヴァレンティーノを名乗る聖人は実は3人知られており、ローマの司祭
ヴァレンティーノ、テルニの司教ヴァレンティーノ、そしてローマ帝国領アフリカの殉教者。
おそらく前者ふたりは同一人物と想像されている。
殉教日が2月14日であるのでこの日を聖ヴァレンティーノの日としてカトリック聖人歴に当てていた。
しかしその存在の不確かさから1969年には削除されてしまったので、カトリック教会公認の聖人でない
ということである。
こんな曖昧な聖人の名前がなぜ恋人の祭りの起源として世界的にその名を馳せることになったのだろう? 
伝説によると当時の皇帝クラウディウス2世は戦さを前にしたローマにて「兵士は恋すれば士気がさがる」
としてローマ兵士の婚姻を禁止したのだが、司祭である聖ヴァレンティーノは秘密に彼らの婚姻を行い、
その罪を問われて捕えられ処刑されたとされる。
さらにはこの聖人は牢獄の看守の娘の盲目を治し、死ぬ前に彼女に当てて「貴女のヴァレンティーノより」
と記したという逸話もある。このように恋人達の願いをかなえ、思いを手紙に託した司祭の名前が現在
の恋人を思いカードや贈り物を送るというヴァレンタイン・デーの源となっているのだろう。

カトリック教会の祭日は本来ローマ時代の異教の神々の祭りに取って代わるものであることがほとんどだ。
ローマ帝国時代、2月13日から15日の間は山羊の足と角をもつ豊穣の農耕神ファウヌス(ギリシャ神話
のパーン)を祀るルペルカリア祭だった。悪を排除し土地を純化し、女性の多産もうながす性的暗喩
の強い祭りでもあったこの日をカトリック教会が良きとせず、聖ヴァレンティーノの日として代替したという
のが実の処と思う。

色々な伝説はあるもの、実際にヴァレンタイン・デーをロマンティックな恋と結びつけたのは英国文学の父
と言われ「カンタベリー物語」で有名な14世紀の詩人チョーサーである。
その詩の中で「鳥達が恋人を選ぶ日」として聖ヴァレンタインの名を引用している。
故にアングロサクソンの文化の中から歴史を辿って生まれてきたのがこの恋を祝う祭りの発祥だろう。

現在その由来も知らずに普及しているチョコ売り商戦の源はこんなところに処し、またコマーシャル化
した祭りの虚ろさはこの現代社会のミスティシズムの欠如をそのまま反映していると思う。

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by jamartetrusco | 2012-02-14 00:38 | Paese (土地柄)


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