2012年 06月 15日

海の主

夏の家を探した。
いつも訪れるバラッティ湾のそばを中心に。
最近は人が多くなって昔のようにはいかなくなっているけれど
それでも美しさで語ればトスカーナの海岸線の中では一番
と思う。
トスカーナの人々だけが知っている隠れ家だったのだがだんだんと
他の地域の人達も知るようになり、今では北イタリア、北方ヨーロッパの
家族連れが多い浜辺となった。
湾であるから荒波が来ないということと遠浅という利点が幸か不幸か
家族連れを多く引き寄せるのである。
我々もその例外にもれないのだが。

それでもまだまだ人が群がる浜辺を避ければまだ静けさを楽しめる
海辺であるー美しい海と鉱物の混じった黒っぽい砂。
トスカーナの海岸線はあちこち試したのだが、やはりバラッティ湾は
心に残る。
背後に松林があり、そしてエトルリアの遺跡のあるポポロニアの丘が
海にそそり立つ。
廻りは美しい自然のみ。私の幼少時代の海の景色を想起させる。
懐かしい香りがある。
昔からあるカフェレストランも全く変わらず。変わらないことの良さをつくづくと
感じる場所。

なるべく人を避けて泳ぐ浜辺ー4時頃になると必ず現れるご婦人がいる。
犬2匹を連れて。
ご婦人はスマートとは言えない体型であるが水に入るとその泳ぎぶりは素晴らしい。
まるでイルカのように、なめらかに、楽しそうに泳ぐ。
愛犬はご主人の泳ぎぶりを誇るように吠える。
毎日毎日欠かさず必ず同じ時間に現れる彼女。彼女の存在を気にかける人は
どれほどいるのだろう。

今回家探しでバラッティ湾に歩いて行ける貸しアパートに声をかけてみた。
もう時期は遅く満杯だったのであるが、なんとこのアパートの経営者が
このご婦人であった。
ついアレが「もしかして犬を連れてくる方ですか?」と聞いてしまったぐらいである。
一言だけ「そう」と答えた彼女。ぶすっとした表情から何かがこぼれた。

それ故最後に自分で貝に手書きしたアパートの名刺をくれた。時間があるときに
楽しみでしているのよ、貝は本物よ、と説明してくれた。
暗黙の内の意思疎通があったような気がした。

バラッティ湾の門番のような彼女の存在。
この海の真の主と思った。
会えてとても嬉しく思った。名前はフランチェスカ。

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by jamartetrusco | 2012-06-15 04:07 | Vita (人生)


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