トスカーナ 「進行中」 In Corso d'Opera

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2012年 06月 23日

隠れ路地にあるオステリア

フィレンツェ、ピッティ宮のある広場の通り一筋奥に入ったところにVia Toscanellaという
人通りの少ない静かな路地がある。この路地を少し行くとパッセリ広場へと出て、この広場はいくつもの
レストランがありにぎやかな場所であるのとは好対照に静かな一角。
この路地に最近できたToscanella Osteriaがある。友人のカルロの知り合いが経営し、
普通のレストランとはひと味違う個性と芸術あふれる空間である。
建物は古くはピッティ宮の前庭にあるLoggia、開廊だったそうで、今の町並みとは違った様相を呈して
いたに違いない。フィレンツェのように15世紀から栄えている街は以前は建物だったところがつぶされて
通りになっていたり、前は屋敷の庭先だったところに建物が建っていたりという場合が多々ある。

さてこの建物にはいくつかの歴史深い人物が関係している。
まずはパオロ・ダル・ポッツォ・トスカネッリ(1397〜1482)。フィレンツェ生まれの地理学者、数学者、
天文学者で、地球球体論を唱えた知識人。アメリカ大陸発見のコロンブスに多大な影響を与えたそう。
トスカネッリなしには大陸発見はなかったとも言っても過言ではない。名前にあるダル・ポッツォというのは
井戸ということで、井戸のあるところに住んでいたパオロを意味する。
さてこの井戸は? 実はこのトラットリアのある建物の中にある。調べるとこの天文学者の住まいはピッティ宮殿のすぐ目の前の建物と言うこと。歴史的人物の住まいや存在を示す石版が壁面についている。
この井戸もその近くにあった庭先の井戸だったのだろうか。

さらにこの建物に関わるもう一人の人物はやはりフィレンツェ生まれの画家オットーネ・ロザイ
(1895〜1957)。未来派にもやや関わり、庶民の貧しい生活風俗や独特な寂々とした風景画で有名だ。
この画家がこのトラットリアの2階にスタジオを構えていたそうである。
1922年ロザイ作の「トスカネッラ通り」。今でもこの路地はこんな佇まいを残す。

歴史香りあふれる住所にあるこのオステリア。経営するファブリツィオ・ロベルト・ゴーリ氏も飲食業を営む家に生まれて伝統的トスカーナ料理を継承するだけでなく、熱心な美術史家であり、また自ら絵筆をとる。
芸術を愛するゴーリ氏の美意識はそのまま彼のオステリアにも生きている。
歴史ある建物を生かして、天井は15世紀当時を思わせる石のアーチにモダンなデザインの照明、
壁にはいくつもの絵が飾られ、画家の工房さながら。サラミや生ハムまで背景の一部のよう。
アレのサラミや生ハムの絵を置いてもらいたい空間だ。
床も少しだけガラス張りの覗き床、足の下の歴史を見せる。
階上のロザイの工房跡も様々に利用できる空間として近々公開するそう。

素敵な空間でお料理もなかなかなのにお値段も手頃。いかにも観光客相手の商業主義のレストランが
多い中、真の意味でフィレンツェ文化を継承したトラットリアのように思う。

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by jamartetrusco | 2012-06-23 18:14 | Paese (土地柄)


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