トスカーナ 「進行中」 In Corso d'Opera

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2006年 08月 09日

Word into Art ー言葉が芸術に変わるとき

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今回のロンドンの滞在中にて観た展覧会の中でもうひとつどうしても紹介したいものがある。(上の画像にある彫刻はロンドン在住のイラクの作家Dia Al-Azzawiの作品)
開催期間は9月3日までともうすぐ終了するのであるが、大英博物館内での無料展覧会ーWord into Art: Artists of the Modern Middle East、 現代中近東の作家達の作品を紹介する展覧会である。大英博物館では1980年代以来中近東の現代アートを収集してきた。その収蔵品と他からの借用作品とを合わせて展示したものである。その内容は古代からの中近東文明,文化の伝統にある詩、文学、コーラン、そしてアラブ文字自体がいかに視覚芸術として展開してきたかを展観するものである。

展覧会のテーマは「神聖なる書(コーランからの一説など)」、「文学と芸術」、「分解する文字」、「歴史、政治、そしてアイデンティティー」の4つの部分に分けられそれぞれを代表する作家の作品を紹介。70名あまりの作家である。なかなか中近東の現代アートなど触れる機会などないので大変興味深く観た。

全体として感じたのは芸術の表現様式が日本のそれに近いこと。「書」ーcalligrapyーという行為自体が重要性をもっている文化圏の芸術はおのずと文字、書をそのままアートに変えていく原動力がある。文字自体が視覚的で、記号性、象徴性を持つからだ。日本の書をおもわせる作品も多くみられる。アラブ文字は日本のひらがなや漢字とはビジュアル的に違うものの、文字に対する意義、物理的な対応は似通っているようである。コーランという強い聖なる書が現代芸術表現の源になっているのもイスラム世界独特のものだろう。仏典を現代アートの作品にしている作家はあまり知らない(案外素晴らしい作品になるかもしれない)。そして文字から抽象表現への展開。そしてイスラム世界の近現代の歴史に無視することのできない戦争と殺戮。今現在、戦争の真只中にあるレバノンの作家やイラン、イラクの作家。そのうち、はるか昔に他国に亡命した作家も多いが、やはり現在の状況を憂い、祖国への思い入れは平和ボケしている我が国とは別物であろう。
その中から作品をほんの少しだけ紹介しよう。

アラブ文字のアルファベット28字を様式化したもの、レバノンの作家Hussein Madiによるもの。日本の紋にひたすら近い。
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コーランからの一文字「存在」  ヨルダンの作家。
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コーランの112章、4つの文列で構成されたこの章をを鏡文字にして反復しイメージ化したもの。エジプトの作家、Afmed Moustafa。どこか日本のグラフィックデザインを思わせる。
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イランの8世紀の詩人Waliba ibn al-Hubabの詩の一説から、A gesture from one man to another is more noble than pearls or coralー人が人に為す行為は宝石よりも尊い。
「人」に当たる文字をダイナミックに様式化している。筆ではなく板にて仕上げたもの。イラクの作家Hassan Massoudyの作である。

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アラブ文字がいかに抽象画に取り込まれるかの例。

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イスラム圏の作家がいかなる活動をしているかの理解の助けとなれば幸いである。
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by jamartetrusco | 2006-08-09 03:38 | Arte (芸術)


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