トスカーナ 「進行中」 In Corso d'Opera

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2006年 08月 20日

Il Cortiloneでの現代美術展

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Soranoの町の一番高い部分に位置するIl Cortilone。すぐ横は岸壁、見下ろせば下を流れるLente川と自然の緑が広がる絶景。Il Cortiloneは16世紀初めにローマの古い貴族の家柄オルシーニ家のニッコロ 4世により建てられたメディチ家の穀物倉庫である。何故メディチ家であるか。
9世紀以来450年間に渡ってこの町の領主であったアルドブランデスキ(Aldobrandeschi)家の最後の娘アナスタジアが13世紀末にオルシーニ家のロマーノ・ジェンティーレ・オルシーニと結婚。この時からソラーノの事実上の領主となったオルシーニ家はグウェルフィ(教皇派)であり、ギベリーニ(皇帝派)のシエナ共和国と敵対関係にあった。1555年、シエナ共和国がフィレンツェに破れ陥落、敵の敵は友達ということからメディチ家のトスカーナ大公初代コシモ1世がソラーノ統治に介入してくることとなる。オルシーニ家の親子、兄弟の対立が相次いだ結果、1604年にはオルシーニ家に代わってソラーノはメディチ家の配下に入る。この穀物倉庫は18世紀になって住居として改装され1960年代まで実際に人が住んでいたとのこと。90年代になって新たに改装され現在ある展覧会空間となった。メディチ家の権力がこんなところまで来ていたとは、と感心してしまう。
さて毎年開かれるこの展覧会はイタリア国内外の作家の作品を紹介する。穀物倉庫の広い空間を廊下を隔てていくつかの小部屋に分けそこに10名の作家がそれぞれの作品空間を作りだしている。イタリアからはベネチア出身であり、現在はソラーノにアトリエを持つIl Cortilone展の芸術監督であるベアトリーチェ・バンダリン、フィレンツェ生まれのセルジョ・タマッシア、ヴェローナからジャンアントニオ・デ・マルデの3名。ドイツからマルティン・フィグーラ、ペーター・ペトリ、ヨハン・ディンプフルマイヤー、ハンス・ハーマン・クープマン、ワルター・ライマンの5名。そしてアメリカからスーザン・ノースとボブ・ベンダーの2名。
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ディンプフルマイヤーの電気仕掛けの作品は観衆を童心に回帰させるものだ。どこか懐かしいぜんまい仕掛けの人形を思わせる。針金などの安易な素材を使いながら夢あふれる形体を作りあげていく。テーマはかならず人体の動きである。

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デ・マルデは人間の原始を見つめるような形体とシンボルの表現言語を使用し、太古の精神性や儀式性の復活を目指すかのようである、

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スーザン・ノースはニューヨーク生まれであるが現在はローマ在住。イタリアの古くからあるグロテスクの人物模様の虜となったらしい。その版画作品が繊細でグロテスクの魅力をうまく表している。

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マルティン・フィグーラの「スタンダール・シンドロム」のシリーズ。スタンダール・シンドロームとは美術、とくに美しい絵画が満ちる空間に置かれたときに目眩や息切れがしてくるという病気を表す医学用語で「赤と黒」で有名な19世紀のフランスの作家スタンダールがフィレンツェを訪れた際の体験に由来する言葉である。フィグーラの作品は写真映像に基づく美術館内の人々と周りの空間を油彩にて表すものであるが、超現実的な表現に抽象模様のベールが被いかぶさり、現実と空想が織り合わされたような不思議なテクスチャーを生み出している。背後の朽ちた壁が絵画の肌合いに融合するかのようだ。

そして クープマンの真っ赤な鳥の巣が目に焼き付いた。
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この元穀物倉庫の古色蒼然とした壁や天井の味わいとそれぞれの作家の作品がうまく調和して相互に作用し合うような上手な構成である。ちょうどお昼どきだったので食前酒のスプマンテ(シャンペンに近い)の振るまいもあり、ゆったりとした雰囲気の中での作品鑑賞。
アートというのは作家の知名度などに関わらず、このようにゆとりのある空間、周りの美しい自然環境、そして展示される空間の歴史ある美の包容によって力を増すような気がした。人ごみにあふれた展覧会場の喧噪では味わうことのできない作品との静かな対話があった。

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by jamartetrusco | 2006-08-20 23:32 | Arte (芸術)


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