2006年 09月 23日
ロンドンより車で約2時間、エセックス州、モルドンより2kmほど海へ向かうところにノーズィー島、Northey Islandがある。ロンドン出張の機会を使って週末一泊した。というのもこの島にある唯一のコッテージが義兄の親戚に使用権があり、年に1〜2回姉一家も利用しているのである。 このNorthey Island, 実はなかなか歴史が古く、さかのぼること10世紀。991年にバイキングとアングロ・サクソンのモルドンの戦いはこの島にて繰り広げられたらしい。この戦いは「アングロ・サクソン年代記」に書かれている他、「指輪物語」にて有名なJRRトールキンがその著書「妖精物語の国へ」のエッセイの中の第3章「ビュルフトエルムの息子ビュルフトノス」にて戯曲的叙事詩として扱っている。 ビュルフトノス率いるアングロ・サクソン軍はこの戦いにて敗北するのであるが。 狭い土手道を通って辿り着く。この道は満ち潮の際は隠れてしまうので島へのアクセスは一日に引き潮時の限られた時間のみ。島自体はNature Reserveー 自然保護地域に指定されている。 このコッテージを建てて住んでいたのは1933年ノーベル平和賞受賞の英国の作家、ノーマン・エンジェル(1872〜1967)。 静かに仕事ができる場所として家も彼が手がけたらしい。いかにも素人作りの追加建築の塔もあって面白みのあるコッテージである。最上階からは360度景色が望める。この部屋でペンを走らせていたのだろうと想像することができる。 94歳まで生きたこの作家は生涯独身であったため、この島は最終的に甥に残されるのであるが、この甥が義兄の大叔父であった。この大叔父、後に相続権の問題や島の環境が損なわれるのを懸念したのか、島ごとナショナル・トラストに寄贈してしまうのである。このおかげで今でも島は自然のまま、そして親戚家族は島の使用権を与えられ、こうしてわたしまでその恩恵に被ることができたわけである。コッテージ自体、休暇用に一般にも貸し出されている。 散歩するといっても小さな島なのでここ30〜40分で一周できる。周りは典型的marshー沼地ーの美しいとは言えない寂れた風景。それがまた心に残る。たまたま珍しく天候に恵まれ散歩すると汗ばむぐらいの気温であった。牛の放牧もあり、顔のおっとりした牛達であった。 カメラを向けると一斉にこちらを向いてくれた。 聞こえる音は鳥の鳴き声と自分の心臓の音とも言えるような真の静寂感。こんなところで書き物や制作ができたらさぞ集中できるだろう。静けさというのがいかに尊いものかを実感した。
by jamartetrusco
| 2006-09-23 20:03
| Viaggio(旅)
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