2006年 10月 03日

アレの制作の軌跡 ー ”Ispirazioni"

今回のミラノでの小展覧会で展示したたった8点の絵であるが、それぞれにアレの作家としての軌跡を語っている。
アレが日本と接するようになったのはもちろん私がきっかけである。93年に出会った時はもちろん日本のことなど知る由もなかった。でも不思議なものである。会ったとたんにどこか通じるもののある人間がいるものだ。日本への知識などない、また言葉もイタリア語しか話さない一人の人間がまったく別の世界から来た私と出会う。ただ私はすでにこの時イタリア美術には通じていたし、イタリア語も少し話せたし、歩み寄りはすでに私の方からあったのであろう。
会った当初の彼の絵はまさにイタリアの色。原色使いが多く、そしてエトルリアへの憧憬から出た象徴的な人物像やシュールな風景などが多かった。対象へ体当たりする「生」の表現である。
95年に初めて共に日本へ。両親への紹介をかねて日本を知ってもらうためである。その年から彼の中に強烈な文化のインプットが起こったのである。すべての表象が新鮮に見え、東京で目に入るあらゆるもの、不調和にそそりたつ醜いビルの森林でさえ、彼には驚きであり、興奮であった。そして訪れた京都や奈良のお寺や庭や仏像の美。それ以来毎年のように日本を訪れそして2〜3ヶ月単位で滞在した。そして97年の「樂」展。日本の芸術の本質を見る展覧会であった。娘が生まれる前の年、彼はこの樂の茶の湯の茶碗に深く魅せられて"Tazza”のシリーズを一気に描き上げる。このシリーズがもととなって2002年にフィレンツェにて展覧会を企画した。その時に加えて描いた作品のひとつがこれらの作品である。

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そして京都。京都との縁は以前のブログにて書いたのでここでははぶくが、京都に移って今年で7年。アレに与えた京都のパワーは偉大である。法然院にて2001年に開催することのできた展覧会”Frammenti d'Infinito"「無限なる断章」展は彼の表現様式、また制作様式を変える分岐点となった。すべての作品が無題である。展覧会に寄せて書いたアレの言葉を借りよう。

    無限から生まれるひとつずつの断片、またはカオス、すなわち「広大なる無限」を
    形作る限りなく小さい部分を表現するために偶然的に見えるように意図された
    色とフォルムである。

この2点はこの法然院展にて展示された作品群の中のものだ。
同様の作品がもう1点あったがそれはイタリアの友人が買ってくれた。
アレの絵を少しだけ持っていてくれる数少ない友達だ。
今でも私の大好きな作品である。砂の表情が生きたとても心の落ち着く絵である。
京都との出会いを象徴するような作品であると思う。

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この時期からシリーズ制作に入り、その後の「小石」「壁」シリーズ、そして今携わっている「包」のシリーズへと展開していくのである。 最後の2点は2004年制作。私たちの住むモンテフィオラーレにて企画したオープンスタジオ的展覧会“In Corso d'Opera"にて初めて展示した。
「壁」のシリーズの一貫であるが、行けば行く程深まる扉のようなイメージである。

京都というとてつもなく奥の深い文化、芸術土壌とフィレンツェというやはり歴史の長いエトルリアとルネッサンスの神秘を内包する芸術都市との融合。これは創造史上のかなりのエネルギーの融合ではないかと思う。そして稀である。
だからアレの作品はこれからも日本とイタリアのエキスを抽出してユニーク且つ力強い表現となり得るだろう。

秘められた可能性を信じながら。

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by jamartetrusco | 2006-10-03 18:22 | Arte di Ale(アレのアート)


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