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2006年 10月 12日

ピラネージの幻想

ジョバンニ・バッティスタ・ピラネージ Giovanni Battista Piranesi (1720〜1778)は主にローマの遺跡を表したエッチングで有名なヴェネト生まれのイタリアの画家、銅版画家である。。もともとヴェネチアにて建築技師としての経験を積んだ。故にそのローマ遺跡のデッサンや銅版画は建築的にも正確、遺跡の失われた部分まで再構築して画にしているほどである。
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しかしピラネージの芸術の極致は何と言ってもその"Carceri d'Invenzione"「空想の牢獄」のエッチングシリーズであろう。この作品は空想上の牢獄として象徴される建築内部を再現したもので、階段やアーチや不可思議な機械などが組合わさった悪夢にでも出てきそうな空間構成である。ウンベルト・エコ著の「薔薇の名前」の映画の建築一部のセット(狂った僧侶の隠れた図書館のある建物)はこのピラネージの版画に着想を得たに違いない。

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後にロマン派やシュールリアリストに影響を与えたと言われているが、当然であろう。建築画でありながら作家の深層心理が投影された超現実と現実の混じり合う幻想の時空間である。オランダの版画家、グラフィックアーティスト、エッシャーの不思議な空間世界もピラネージの落とし子と言えよう。

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このCarceriのシリーズの第一版は1745年に出版され14枚のエッチングから成る。第2版は1761年出版、第一版に手を加えて並べ替えI~XVIまでのローマ数字で番号付けされた。いずれも銅版という白黒世界でありながらとてつもなく深淵な幻想へと開放してくれる。
メトロポリス
機械の奴隷と化した未来の人間社会を象徴的に表したフリッツ・ラングの名作映画「メトロポリス」の舞台を想起させるのも偶然ではない。
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18世紀という時代、かたやロココ様式が宮廷文化に花開いていたいう時代背景を考えるとこのピラネージの非凡さが伺われる。ある芸術家に惹かれる理由として、その絵画的美しさの興味もあることながら絵画に顕われる作家の精神性、そしてときには狂気とも言えるような偉大なる創造性、言葉を変えれば悪夢的空想の世界をみるとき心が動かされるような気がする。特にそれが単なる風景画であったり、室内画であったり、或は心理下の景色であったりするかもしれない、しかし執拗なエネルギーにてある事物に拘り続ける作家の頭の構造。ダヴィンチ、アルチンボルド、ラトゥール、フェルメール、ターナー、そして先日紹介したばかりのフリードリッヒしかり、もう少し近現代ではルソー、ベーコン、これらの作家に一応に共通するのはそういった世界であると思う。そして私にとって極めて興味を覚える芸術世界のひとつの顕われである。
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by jamartetrusco | 2006-10-12 00:36 | Arte (芸術)


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