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2006年 11月 27日

ホルバイン、ヴェラスケス、ホックニー

ホルバイン、ヴェラスケス、ホックニー。
この時代も様式も全く異なる3人3様の画家に共通することは?

ひとつには現在ロンドンにてその展覧会が開かれていること。
ひとつには3人とも肖像画を多くなしたこと。
そして3人ともいわゆる「絵画的」絵画を制作する画家であること。
こうしてみると同時期に展覧会が開催されているのも偶然とは思えなくなってくる。

ハンス・ホルバイン(子)は1497/8年、南ドイツ、アウグスブルグ生まれ、1543年ロンドンにて没。エラスムスに後押しされて宗教改革真っただ中の激動するイギリスにてヘンリ−8世の宮廷画家として仕事を得る。その当時年間30ポンドの給与であったという。
彼のヘンリ−8世の肖像画はあまりにも有名だ。
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素材が手に取るようにわかるその写実的手法は彼独特のものであり、また等身大の人物肖像はまるで本人と合い面している錯覚にも陥らせる圧倒的なリアリズムを持つ。しかし周囲とモデルとの大きさのバランスのせいなのか、どこか空気感が超現実的で、ホルバインの画法の技巧を駆使するための手段としてどっしりと画面を被っている対象物として表現されているように見える。
色とテクスチャーと人物の表情。すべてが呪文をかけられて静止したようである。


ディエゴ・ヴェラスケス(1599〜1660)はセヴィリア生まれのスペインを代表する大画家である。1623年来スペイン王室の宮廷画家として数多くの肖像画を残し、晩年の「ラス・メニナス」は美術史上の大傑作である。

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彼のカンバスは17世紀初期のものとは思えない即興的な筆使いで、まるで2世紀先を行っているようである。

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彼の初期の庶民を描いた風俗画はまた魅力的だ。宮廷画にある色彩の鮮やかさはなく黒と茶を主調とした厳かな作品である。彼の茶は崇高である。茶色をこれほど上手に使いこなした画家はいないのではないか。


デヴィッド・ホックニーはイギリス、ヨークシャー生まれで、現在も現役で活躍中のイギリスを代表する現代作家である。大規模な回顧展がナショナルポートレート・ギャラリーにて開催中である。
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初期から現在に至るまで、とにかく多くの肖像画を制作している。家族、友人、愛人、彼のスタジオを訪れたあらゆる人々、そして愛犬まで、膨大な数の肖像画の群。時代時代によって色彩や手法も変化しているが、一時期のポラロイド・カメラによる写真コラージュの時代を除いてすべてが油彩、水彩による筆さばきのなまなましい絵画である。絵の具という存在がカンバス全体に声を大に主調するのが感じられる。色彩もロサンジェルスに移ってから光がより強くなるが、常に、明快、透明である。
ホックニーのパレットには黒は存在しないかのようである。

冒頭に共通点を挙げたが、しかしこれほど様式の違う画家3人もいないだろう。
時代の違いはもちろんのことであるが、細い筆の重なり合い重厚な色調にて写実描写を試みるホルバイン、即興的な筆使いにて色彩調和の美としての画面を構築したかのようなヴェラスケス、そして明るい色彩で油彩をあたかも水彩のように自由に駆使するホックニー、この3人の色と筆使いの違いは一目瞭然である。しかし3人とも筆と色彩という絵画のもっとも基本である要素をとことん突き詰めていることにおいてまさに「絵画的」な画家である。
絵画の醍醐味を真に味わう機会を与えてくれる。
抽象、ミニマル、コンセプチュアルな表現では得ることのできない作者とカンバスの対話を生に感じることのできる3人の画家の作品である。

とは言え個人的にはやはりヴェラスケスの偉大さに脱帽した。
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by jamartetrusco | 2006-11-27 19:39 | Arte (芸術)


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