2006年 12月 08日

行方不明のフラ・アンジェリコ再発見

ルネンサンス美術の愛好者であれば興味津々の最近のビッグニュース。

15世紀のドメニコ派の僧侶であり画家であったフラ・アンジェリコ(1395〜1455)。フィレンツェ北部のムジェロ地域のヴィッキョで生まれた。その地にはフラ・アンジェリコの生家もある。イタリアでは宗教画を描いたことからBeato Angelico (至福のアンジェリコ)という名前で知られる。
フィレンツェのドメニコ派修道院跡のサン・マルコ美術館は有名である。僧侶の各小部屋に描かれたキリスト生涯のフレスコ画はアンジェリコの晩年の筆、特に「受胎告知」の美しさは天上のものである。この修道院には後にフィレンツェでの宗教改革にて怒濤の波を引き起こしたサボナローラ僧も在した。

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さてフィレンツェ・ルネサンス黄金時代の立役者であるコシモ・ディ・メディチ(コシモ大公)のために1430年終わりから40年初めにかけてフラ・アンジェリコが制作した祭壇画があり、聖母子像の中心画に伴って、ドメニコ派の聖人が金ぱくを背景に描かれた8枚のテンペラ画パネルがあった。制作から約400年後、ナポレオン戦争時代にこの祭壇画は破壊され、ばらばらとなり、そしてパネル画は散乱してしまった。戦争が美術品の略奪や破壊に必ず貢献するというのは今も昔も同じだ。その内6枚の存在はすでに確認されていたが、残りの2枚は未だに行方不明であった。

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ところがその2枚が今年になって再発見された。イギリスのオックスフォード州に住む、元美術館の写本の学芸員のご夫人の自宅の寝室の壁にひっそりと飾られていたのである。彼女の父親が美術収集家で60年代に数100ポンドにて購入したものだそうだ。その後ずっとこの家に眠っていたのだが、最近になって高齢になった彼女が手元の絵画コレクションの価値を鑑定してもらうにあたってこの絵を見せた専門家が「もしかして失われたフラ・アンジェリコのパネル画では?」と追求にあたったのである。

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すでに発見されている6枚と同サイズで同手法、ポプラの木版上のテンペラ画。主題もドメニコ派の聖人である。この専門家の興奮は大変なものだったらしい。
イタリアルネサンス絵画の専門家数人の意見も仰いだ上でこの2枚が本物であるということを確認し、この11月に最終的にこの旨を公にした。 このご夫人あいにく発見後亡くなってしまうのだが、家族は今まで当たり前のように見ていた絵を持つ手が震えたと言う。

今後この絵はどうなるのだろう。他の6枚はどこにあるのだろう。皆個人の持ち物になっているのか。おそらく競売にかけられまた高値で落札され世界のどこかのお金持ちの家に置かれることになるのだろう。本筋を通すならサンマルコ美術館に戻されることが最良であろうが。

お宝が家に眠っていたというニュースがここのところ相次ぐのだが、さて我が家には何か眠っていないかな、なんて言わずもがなのことを考えてしまう。
それにしてもこんな素敵な小品を寝室に飾って密かに楽しみたいものだ。
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by jamartetrusco | 2006-12-08 20:42 | Arte (芸術)


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