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2007年 01月 22日

京の唐紙

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江戸時代から今に至るまで変わらず唐紙作りを続けて来た唐紙屋千田長右衛門、現在11代目をむかえる。江戸時代には13軒もあった唐紙の版元も明治期までにはほとんど家業閉鎖を余儀なくされて残ったのはこの唐長千田家のみである。

唐紙とはその字の通りもともと唐中国より渡ってきた美術紙の名称である。当初は書くための料紙であったという。平安時代の日本、雅な和歌から書き物まで上流階級には必須の希少価値の唐紙であったに違いない。そして次第に唐物から日本の風土と美学にあった形で発展していったのである。卓越した書や茶碗で知られる光悦の嵯峨本つくりにも唐長の関与があったらしい。その後、唐紙は桂離宮から二条城、そしてさまざまな寺社内の襖紙や屏風の裏裝として使われてきた。この唐紙の歴史や今に至る経緯、そしてその伝統と美学を詳しく知りたい方には是非11代目当主の千田堅吉氏の著書「京都、唐紙屋長右衛門の仕事」という本を読まれたし。
この当主の心意気、生き方、そして長く守り続ける手仕事のなにものにも替えられない技と呼吸と美学の奥深さに真の感動を覚えた。


唐紙の版木は全部で650もある。そしてその意匠は現代の生活の中でさらに新しさを増す美しさがある。
現代性と伝統、斬新と古典、古くて新しい、そのような2元性をそのまま体現する唐長の唐紙である。そしてすべて自然、真なる素材を使って手仕事でできる作品である。
その微妙な光の陰影にて色合いを変えていく色彩。影あるからして生まれる柄の美しさ。


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その意匠を現代の建築空間にも活かして生まれ変わった建物が京都烏丸四条通りの角にある。大胆にも外装のガラス張りの壁に唐紙の意匠を使っており、建物内の照明や壁にも同柄が使われ外装との一貫した調和をはかっている。さらに一階には唐紙の意匠をポストカードや便せんなどにあつらった紙のショップもあり日常生活に生きる唐紙の伝統と美を提案している。すっきりと並んだ唐紙のポストカードの群はまるで全体がひとつの意匠を生み出すような粋な空間構成である。


唐長の素晴らしいのは伝統をただ保存するべき大切な遺産として残すだけでなく、その文化遺産を現在の生活に活かすべく新しい創造の力と変えているところであろう。それには貢献する若い心と力が不可欠であろう。そしてひとつの伝統はこうあるべき、という限られた範疇にこだわらずに唐長の根源にある美学にそうことをどんどんと実践していく挑戦の精神。

伝統というのはかくあるべき、とつくづく感じたものである。西陣など着物を始めとする日本の伝統産業が厳しい状況にある話しは多々耳にするが、伝統を続けるには創造する必要がある。創造というのは伝統をひっくり返すのではなく伝統を昇華した上ででてくるものであろう。
伝統と創造の問題。グロバリゼーションなどという言葉がもてはやされて久しいが、真の国際性とはこういった人間の手によって生まれるひとつの技と美学を深めることに自ずと集約するエネルギーへの賛同から発するものではないかと思う。いろいろ想い巡らす今回の京都滞在であった。

京都、唐紙屋長右衛門の手仕事
千田 堅吉 / / 日本放送出版協会
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by jamartetrusco | 2007-01-22 23:02 | Arte (芸術)


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