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2007年 02月 05日

イタリア副首相兼文化大臣ルテッリに一言

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イタリアの左翼系新聞Repubblicaの金曜発売の付属雑誌Venerdi di Repubblicaに掲載されていた記事を読んでどうしても一言進言したい。
少し前からこの副首相は文化大臣の立場から国外に不法に売却された美術品について論議をかもしていた。話題の中心はロサンジェルスにある富豪ポール・ゲッティの収集品からなるゲッティ美術館所蔵品である46点のイタリアの美術品が不法に持ち出され売られた作品で、これらはイタリアに返却すべきである、との主張である。そしてこの雑誌の記事ではアメリカのゲッティ美術館の他、日本のMiho Museum、デンマークのビール会社のカールズバーグの持つコレクション美術館Ny Carlsberg Glyptotekにあるイタリアの美術品がいずれも不法出国売却されたもので、それに関しての追求を求めていることが書かれていた。

これらの美術品を不法に手に入れ売却していたのはイタリアの古美術商、ジャンフランコ・ベッキンーナ氏とジャコモ・メディチ氏の両名。日本の美術商が仲介となってMiho美術館に売ったらしい。記事の論調は作品の出所が疑わしいにも関わらず買ったこのMiho美術館を糺弾している。まるで悪者は美術館であるかのように。
しかしである、いかにこの作品が不法売却されたとは言え売ったのはイタリア人、そしてただで盗んできたわけではなかろう。


Miho Museumにいかれた方はおられるだろうか? 滋賀県の山中を上がっていったところに忽然と現れる美しい美術館である。もともとの財源が宗教団体であるということからやや違和感は感じるものの美術館の建築、運営そして展示企画などはなかなかである。一度訪問した際には常設品としてイタリアの古い美術品などがあるので、いったいどこから来たのやら、と多少疑問に思ったのは事実である。 しかし日本の美術館の多くがそうであるように、良い意味での一点豪華主義的な展示の効果により、観るものはじっくりと作品の価値を堪能することができる展示がされていた。作品が大事にされている、というのは一目瞭然である。

ここで、このルテッリ文化大臣(そしてこの記事を書いた記者に)に進言したい。
いったいイタリア内の美術館の膨大なコレクションがどれだけしっかりと管理され展示されているのか? どれほどの数の美術品が修復を待ちながら美術館の倉庫の埃の中に無造作に置き去りにされているか?
そしてどれだけの美術館の展示室の半分が閉鎖されコレクションの半分も観れない状態であるのか? 
さらにその展示たるやひどいもので、作品解説もままならず、教育的な意義をなさない展示である美術館がほとんどである。他の国の美術館を少しでも見て学ぼうとしないのか?

自国の余りある文化遺産の管理も十分にできていない状況の中、とるに足らないほんのわずかの不法に出国して売られた(それもしつこいようだが盗んだわけでなく買った!!のである)作品について問題にする時間やエネルギーが必要とは思えない。もちろん不法な形での美術品取引自体は許されるべき行為でなく、糺弾されるべきであるが、しかしゲッティ美術館にしろ、Miho美術館にしろ、それらの作品を大事に保管し展示し、アメリカや日本の興味ある人々に見せているのである。これらの作品が仮にイタリアに返却されたとして、どこに置くつもりなのか? 結局はまたどこかの美術館の倉庫の埃にまみれるだけであろう。

そして他の世界なだたる一流美術館の多くは過去の歴史上の略奪の結果今でこそ誇れる美術館のコレクションが築かれているのである。すべての国が自国の美術品を自国に返せと言い出したらどんなことになるか? 美術品はある歴史の中で場所を変え状況を変えながらも大事に保存され、そして観る人の目に触れる機会があることがなによりも重要であると思う。たとえ入手の仕方がどうであったにせよ。
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by jamartetrusco | 2007-02-05 19:29 | Paese (土地柄)


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