トスカーナ 「進行中」 In Corso d'Opera

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2007年 02月 26日

キクラデスの小像


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キクラデス文明とは紀元前3200年から紀元前2000年にかけてエーゲ海の220にもおよぶキクラデス諸島一体に栄えた文明である。この諸島で良質な白大理石が豊富にとれたらしい。
書記が残っていないのであまり詳しくわかっていないが、この文明が残した大切な遺産は大理石でできた女性の小像である。

初めてこのキクラデスの小像の実物に出会ったのは大英博物館だったか。その後他の国の美術館や博物館に行く度にこのキクラデスを探した。
白い大理石の柔らかな感触の小さな女性の立像。というより宙に浮いているような超然とした様子である。いずれも腕を前で組んでやや上向き加減に頭を持ち上げながらはんなりと佇んでいる。そのフォルムの簡素さと抽象性に心打たれ、それ以来このキクラデスの小像はわたしを魅了してきた。その後に栄えるギリシャ古典の均等のとれた彫刻や左右対称の端正な壷などを前にしては味わうことのできない「何か」を感じるのである。
このやや上向きかげんの姿から祈祷の意味を持つものともされ、または豊穣のシンポルである女神とも考えられている。そういえばイースター島の巨大頭像の上向きの角度に似ているかもしれない。

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キクラデス像のエッセンスは実に様々な近代の芸術作品に認めることができる。ブランクーシやピカソ、モジリアニまたハンス・アルプなど近代の作家の彫刻にもそのの息吹が感じられる。
(ブランクーシについては後日触れたい)
そして陶芸においてはドイツ生まれであるが第二次大戦中にイギリスに移り、やはり似た運命にあるオーストリア生まれのルーシー・リーとともに近代英国の陶芸作家の第一人者とされるハンス・コパーの陶彫にはキクラデス像の本質がそのまま宿っているようである。
このことを指摘するのは別に私に始まったことではなく事実、コパーのこの手の作品はcycladic-「キクラデス」ーと呼ばれている。


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今回訪れた英国ノリッジのイースト・アングリア大学内のセンスベリー・視覚美術センターのコレクションにも優れたキクラデスの像の一群に出会うことができた。そして珍しい大理石の壷にも。やや歪んだような気負いのない美しい形に見とれる。


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サー・ロバートとレイディー・リザ・センスベリー夫妻が長年に渡って集めてきた、日本美術、アフリカ、アジア、オセアニア、アメリカ美術、20世紀絵画、彫刻、陶芸などの質の高いコレクションは現在ではEA大学に寄贈され、故に幸運にも大学敷地内のモダンな建築物内にその膨大なコレクションを展観することができる。サー・ロバートはイギリスを訪れたことがある方なら目にしたことのあるだろう創業1869年のスーパーマーケット・チェーン、センスベリーズ(Sainsbury's)の子孫である。

ご夫婦の美術への拘り、好みが一目瞭然にわかるコレクションの作品群。キクラデスの像はやはりあるべくしてあった。それも数多く。5000年以上も前に生まれたこの小さな像の前でしばし時の流れるのを忘れ遥かなるエーゲ海へ想いを馳せた。
偉大なるキクラデス。

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by jamartetrusco | 2007-02-26 01:46 | Arte (芸術)


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