トスカーナ 「進行中」 In Corso d'Opera

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2007年 04月 26日

自然と糸の妙技

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カルロ・サイン、アンドレア・マリーニについて語ってEEA21展のもうひとりのフィレンツェからの作家エレナ・サルヴィーニ・ピエラリーニ女史を紹介しないのは片手落ちだろう。
カルロとアンドレアはアレと互いに刺激し合うフィレンツェ在住の数少ない作家の友人として以前から知った仲間であったのだが、この展覧会のための作家選出を依頼した友人の美術評論家であり作家であるエルダの推薦でエレナとは今回初めて出会うことができた。

彼女は我々よりずっと年齢的にも年上で人生においても大先輩である。アンドレアの工房を訪れたときがほんの2回目の出会いであるので、やはり年上の方に話す敬語を使ったり、Signora(ご婦人)という言葉を使いがちだったのだが、すぐにしかられてしまった。
エレナ、と呼んでくれないかしら、と。少し話していたらそのエネルギッシュで若々しく、そして時にフィレンツェ人独特の毒舌も混じる楽しい人柄に惚れ込んでしまった。

50年代にロンドンに滞在していた頃に、ヴィクトリア&アルバート美術館にてトスカーナや他のイタリアの都市の伝統刺繍をみて、母に教えてもらった刺繍に自分も情熱を捧げてみようと決心して以後90年代初めまで刺繍作品を作り続ける。その繊細な糸と絹、麻、オーガンジーなどの布地との妙技は単なる手芸の刺繍の域を通り越して、ひとつの絵画としての力を持つ。

刺繍以外の彼女の興味は様々な自然や体験の写真を撮ること。そして自然の賜物である落ち葉、貝殻、海岸の小石や流木などへの愛情は並ではない。彼女の家の中の棚という棚はそれらに埋め尽くされていた。アレも同様のコレクションがあるが、なんといっても収集している年月の違いは歴然としている。

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刺繍、写真、自然からのfound objectsという3つの要素が組み合わさって出て来たのが彼女のI Libri in Piedi ー「立つ本」ーの全30巻のシリーズである。写真と自然の素材そのままを糸という媒介物にて織り上げた作品である。日本なら絵巻物になるところをやはりイタリアなのでアコーデイオン式の本の形式となっており、開いて立たせた状態で展示する。
彼女の鋭い美意識と糸の巧みが自然を媒介にひとつのロマンチシズムとファンタジーの世界を編み出していく。

長年刺繍作品を作ってきて、どこへ行っても「刺繍家」と言われるのに飽きたのだ、という。
なんと呼ばれようが、彼女の目指すユートピア、桃源郷がその刺繍にも本にも一貫して表れているのは明確である。
50年代、60年代、70年代、80年代、90年代、そして21世紀の今。それぞれの人生を糸という手段で綴ってきたのだろうと思うとそれだけで脱帽するし、人間として、女性としてのダイナミズを感じる。実に素晴らしい作家と知り合うことが出来て嬉しく思う。

追記であるが、EEA21の横澤さんの興味深いワールドアートレポートEEA21にて今回のフィレンツェ、ミラノの体験レポート、EEA21の夏の展覧会に出品が決まっているアレや他の作家の方について、画像とともに紹介してくださっている。

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by jamartetrusco | 2007-04-26 02:12 | Arte (芸術)


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