トスカーナ 「進行中」 In Corso d'Opera

jamarte.exblog.jp
ブログトップ
2007年 05月 30日

シュールリアルな時代

明日から仕事でロンドン、そしてニューヨーク。
今回たったの2日間のロンドン滞在中に絶対に見逃せない展覧会が2つある。
ひとつはV&A美術館にてすでに3月末から開催中のSurreal Things: Surrealism and Designシュールリアリズムとデザイン展である。
そしてもうひとつはテイト・モダンで6月1日から始まるダリとその映画展である。

シュールリアリズムの草分けであるダリとシュールリアリズムのデザイン、というふたつの同類ジャンルが同時期に開催されるのは偶然ではあるまい。そして去年の夏にもやはりシュールリアリズムに関する展覧会をヘイワード・ギャラリーでも開催していた。この突然のシュールリアリズムの人気はなんだろう。

美術史には様々な動き、運動、グループなどがあり、時代時代によってその人気度や注目度が変遷する。ある美術の傾向へ回帰するがための表現まで登場することもある。
イギリス,ヴィクトリア朝,19世紀半ばに登場したラファエロ前派などはその一例だ。ラファエロ(だけではないが彼が代表ということで)に端を発するマニエリズム様式に反撥しラファエロ以前の15世紀(クワロトロチェント)の美学へ回帰しよう、という動きである。
作家も時代によってその人気度が上がったり下がったりするのは常なることだ。

シュールリアリズムもしかりで、あまり脚光を浴びない次期が続いていた。
つい最近まではミニマリズムの旋風が吹き、ビデオ・アートやインスタレーションがもてはやされいた。バウハウス、構成主義、シュプリマティズムなどがI N でオルガニックなシュールリアリズムや色彩重視のフォービズムなどはOUTという時代が続いていたように思う。

シュールリアリズムの絵画を代表する作家というと、ダリの他にイヴ・タンギー、マックス・エルンスト、フランシス・ピカビア、ルネ・マグリット、ポール・デルボーなどなど。そして彼らに多大な影響を与えたのはジョルジュ・デ・キリコである。
1920年代にアンドレ・ブルトンが唱道者として発起したこの動きは相反する、説明不可能な事物を並列させたり、奇抜で空想あふれる主題やコンポジションがその主な特徴である。そして人間の奥深くを掘り下げて行くような深層心理的な作品や夢や悪夢を具現したような極めて空想性と想像力に訴える作品が多い。

その代表作家であるようなダリ。テイト・モダンでの展覧会は100点あまりの絵画、デッサン、映画を集めたもので、そのインスピレーションの源であり表現のはけ口でもあった彼の映画を再評価しているらしいから、楽しみだ。ブニュエル合作の「アンダルシアの犬」を改めてじっくり見てみたい。
ダリはピカソなどよりも数倍重要な20世紀を代表する画家である、という興味深い記事を読んだ。反社会的な行動でショック療法のような影響を常識にのっとる社会に与えることのできた最後の大物アーティストというのである。確かに変わったダリ独特の口ひげをしたため、常に自己顕示欲旺盛で、現在誰もがまるで宗教のようにあがめている「ポリティカリー・コレクト」(政治的に正しい)とは正反対の発言をし続け。そして永遠のミューズであるガラを崇拝し。
とにかくエキセントリックという言葉がふさわしい人物である。彼の表現も生き方も実は現在の視覚イメージが氾濫する21世紀を先駆けていたように思える。今現在ダリのような作家はいるだろうか、と問いかけると確かに頭に浮かぶ名前はない。

シュールリアリズムが何故に再発見されているか、それはやはり人間の心がやや八方ふさがりになって心の再確認や再発見に目が向いている時代であるからではないか。論理や理屈が通る社会はすでに過ぎ去り、混沌とした暗黒時代に突入しているかに見える現在。そういう時期に人々は不可思議で理屈の存在しない表現を求めるのだろう。そして現在の社会時代がすでにシュールな状況である。理不尽、深層心理、悪夢、キッチューシュールな特性はまるで反面鏡のように社会を映し出してくれる。


f0097102_16462397.jpg

[PR]

by jamartetrusco | 2007-05-30 16:53 | Arte (芸術)


<< 展覧会のお知らせ      選ばれたるわが町モンテフィオラーレ >>