トスカーナ 「進行中」 In Corso d'Opera

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2007年 09月 21日

水面下の美術館

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9月15日に開館した佐川美術館の樂吉左衛門館。
琵琶湖の右岸に位置する佐川美術館はすでに10年前佐川急便設立40周年を記念して
建てられた。当時開館した日本画の平山郁夫館と彫刻の佐藤忠良館に加えて今年設立50周年、美術館開館10周年を記念して新館として開館したのがこの樂吉左衛門館である。
樂家の当代15代の吉左衛門氏。樂家に400年以上続く樂焼の歴史やその茶との関わりなどについてここで書くつもりはない。
この館はまさに樂家当代の美の集約、殿堂である。建築もすべて自身で草案から設計まで担当した。収蔵品である樂茶碗はもちろんのことなんといっても圧巻なのはその建築構想である。

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水を主体にした佐川美術館の環境であるが、この新館は水の下に建設されている。
人間の肉体と精神に深く繋がる水。人は生まれる前から水(母体の)に浮かんでいるのである。
そして川とともに、海とともに発展してきたのが人の歴史である。
その水を下って水底に忽然と顕われる美術館の空間。いや美術館というよりは古墳の奥深くに降りていくような、まるでピラミッドの内室に下るような錯覚に陥る。

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階下に降りて唯一地上とのつながりはガラスの開口から日差しを浴びてきらきらときらめく水のシンフォニーのみである。ビデオ・アートが作り上げるイメージが陳腐で力なく見えるその自然の奏でる光の芸術はなんだろう。一日の太陽の傾きによってその光像も刻一刻と変わっていく。
まさに束の間の、儚い水と光の美。
立礼茶会の間であるのだが、神聖なる祀りへのオマージュの如き空間。

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導入部分ですでに威厳ある自然と人為、美と芸術のなす技の呈示にまるで頭をがーんと打たれたような感動を覚えるのであるが、それから次次と視覚と触覚と心の琴線への美的刺激が繰り返される。
使われている素材はすべて人為の加わった自然である。オーストラリアの鉄道の枕木。バリの古木。ジンバブエの石。すべてが人の手の加わった、しかしあまりにも強烈な自然の「実」が
まるでそこにあるべくしてあったかのように置かれている。それぞれの共鳴がひとつの
まぎれもないあるがままの自然の力とそれに泰然と調和する人の為の美の融合を作りだしている。
木の透かしから見える外界の自然。歩くとまるで万華鏡のように外界の自然が眩しく目に入ってくる。

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なんと素晴らしい。様々な素材がそれぞれの呟きを持ってひとつの創造の輪(和)を
形成していくその過程。
氏の制作の深海に流れる創造の水流が伝統というとてつもなく分厚い礎の下で脈々と
鼓動するのを感じた。

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by jamartetrusco | 2007-09-21 19:53 | Arte (芸術)


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