2008年 05月 28日
ワインとオリーブ・オイルを作る地元のおやじさんがいるのだが、 人間の動物的、本能的強さを体現したような人である。 彼の家は典型的トスカーナの田舎家でやや小高い丘の上にある。 周りは自分が手塩をかけて育てている葡萄畑とオリープ畑。 オリーブの剪定ではなかなかの腕利きだそうだ。 外には猫の大家族が共存している。番犬もいっぴき。 家には年老いた叔母さんとその息子も同居している。 彼はどうも一人ものらしい。キャンティの野生いのししのようなワイルドさが あり、ぼさぼさの長髪で一見若々しく見えるのだが、なんと65歳とのこと。 驚きである。 そしてこの叔母さん、なんと93歳で腰骨を折り、今リハビリ中という。 彼曰く自分のお祖母さんは一度も医者にはかかったこともなく15人の子供を 自宅出産し87歳まで生きた、という。 今の都会の人々のように何かというと病院に飛んでいくなんて、考えられない。 ちっとも豪華な生活ではないけれど、自然とともに生きていて自然に生きるものの知恵がある。そしてたくましさがある。 病院や医者を否定するのではないが、今の医学、なんでも検査、検査で本来の「手当て」の意味から遠のいているようである。 手を当てることによって癒されるというのは実は真実に遠からずであると思う。 この人とその根本的な生き方をみていると「病いは気から」と思えるのである。 この人のまた面白いのはワインを買いに行く度に社会性、歴史性、政治性に 富んだ話題に花咲くことだ。彼の抱くのは左派も右派も信用しないアナーキーで、 アボリジニな思想である。 地元の小さな農家はどんどん大規模ワイン生産のお金の出所すら怪しげな大企業 の所有に取って代わり、そのために自然の調和は壊されてワインの味まで同一化 されていく。この付近でも個人で頑張ってワインやオリーブオイルを作る希少価値の人となりつつある。彼の土地を買収しようという輩は少なくないと言う。いつまでも抵抗していくぞ、という意気込みたっぷりのおやじである。 古くからある葡萄の捻曲がりながら生き残ったその賢老人のような姿は今あちこちで植えられる新種の形が一律同一で弱々しい葡萄とは別物である。 このおやじもまさにこの古葡萄のような智慧ものである。 応援していきたいと思っている。
by jamartetrusco
| 2008-05-28 18:40
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