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2009年 09月 28日

ある陶芸家のスタジオ

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あるオランダの陶芸家のスタジオを訪れた。
アムステルダムのOoster 公園の近郊にあるこのスタジオは今年初めに引っ越してきた。
住まいとスタジオを兼ねる小さい空間からの移転。やや中心からは遠のいたものの
その広々として自然光あふれる空間は彼にとっては最高の賜物である。
オランダの多くの作家は政府の助成金によりこのようなスタジオを借りる幸運を
得ている。近頃はそうでなくなった、とこぼす彼ではあるが、イタリアや日本の状況
に比べると天国である。住まいにしないことを条件に格安に借りられるこのアーティスト
専用スタジオ。アパートの同棟に数人の作家が共存する。
彼の作品は妥協を許さない。ろくろでひいた壷の形体をカットして抽象形を構成していく。
裏と表、光と影、色の濃淡が完成形を決める。
ひとつの作品を完成させるまで数ヶ月かかると言う。
半乾きの状態で削りを入れ形をさらに定めて行く。
釉薬の意外な色調が彼の特徴でもある。鋭い形とは対照的な淡いピンクやオレンジ、青、緑、紫。
オランダという空の低く、雲の厚く、水の多い土地柄であるからこそ生まれる色合い。
グレーやモノトーンの背景に映えるシュールな色。
水や空に効果的に映ろう人間の夢や祈りを表す色。

世界の陶芸界でも中堅の作家としてその名は知る人ぞ知る。その作品はこの9月オープンした
ばかりのロンドンのV&A美術館のセラミック・ギャラリーの広報イメージにも使われた。
そんな彼は実に人間味あふれ、誠実,謙虚、ともにいて気持ちの良い人柄である。
奢りや虚栄心や野望が皆無の作家である。だからこそ生まれる純粋で本質的な表現。

その名はWouter Dam
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by jamartetrusco | 2009-09-28 23:59 | Arte (芸術)
2009年 09月 24日

物語のあるオブジェ

 Telling Talesという楽しい展覧会がロンドンの工芸装飾美術館であるヴィクトリア・アンド・アルバート美術館にて開催されている。家具、照明など日常に使われる機能のある形体が展示物であるのだが、それぞれの物体はさまざまなデザイナーの思いのままの物語が繰り広げられひとつの不思議なオブジェとなっている。
機能はほぼ無視したものもあるのだが、思いがけない素材の使用やシュールリアルなオブジェとしての家具などみていて飽きない。Telling Talesという展覧会の題名の通り、物語のある家具達である。副題も面白い。「現代デザインにある空想と悪夢」 そして3つのセクションに分かれた展示室。第一室はForest Glade, 森の奥深く、妖精世界を喚起させるような自然や空想風景、第二室はEnchanted Castle, 魔法にかかった城、歴史的なデザイン様式の誇張やパロディー、そして最後の部屋はHeaven and Hell, 天国と地獄、文字通り人間が避けることのできない死と死後の世界。
森にうごめく妖精達の悪戯か、天国へつながる階段か地獄へ導く扉か。そんな想像力を駆り立てる展覧会のコンセプト。デザインという分野の地平線の広がりを感じる。
デザイナーの生まれを見るとかなりの割合がオランダやベルギーのデザイナー。
彼の地の伝統がシュールリアルな表現に長けているのかとも思う。ベルギーと言えばボッシュから
始まり、アンソール、マグリット、デルボーなどシュールリアルな表現を好む作家が多くいるようだ。オランダは思い起こすのはエッシャーぐらい。しかしフェルメールやレンブラントも自身の精神世界を追求した意味では超現実的な表現とも言える。
この展覧会のサイトの構成もなかなか優れている。展覧会の主旨にあった物語性のあるデザイン。
ひとつひとつの展示物もすべて網羅されている。
子供の持つ想像力と新鮮な驚きをもって創造された奇怪なオブジェ達を前にデザインとアートの統合、ものつくりの面白さ、物語のあるオブジェという新たな一分野の発見を促す展覧会である。

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by jamartetrusco | 2009-09-24 16:38 | Arte (芸術)
2009年 09月 11日

展覧会情報

フィレンツェと近郊での展覧会2件。

友人のアントネッラ・ブッサーニッチの個展。
Casa della Creativitaという元僧院の回廊の空間にて。
2006年から現在に至るまでの彼女の軌跡を語る展覧会。
フランスで活躍する彼女の久々の故郷フィレンツェでの作品紹介。

チェルタルド。ボッカチオの生地にて有名な古い美しい町のPalazzo Pretorio (管区長屋敷)
での展覧会、Concreta 2009、「土の彫刻」展。
イタリア、フランスの陶芸家のグループ展。
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by jamartetrusco | 2009-09-11 23:49 | Arte (芸術)
2009年 09月 09日

夏の終わり

残暑が厳しかった今年の夏もいよいよ終わりを迎えそうなこの数日の秋の気配。
今年の8月は本当に暑かった。とくに半ばから後半にかけて。20数年ぶりの暑さと聞く。
石造りのこの家は夏でも夜になるとややひんやりとして寝苦しいということはめったに
ない。しかしこの8月は毎晩日本の熱帯夜を思い出すような暑さでシーツ一枚もかけていら
れないほどだった。
久々に我が町にずっと滞在する今年の夏。日本からも多くの友人達が訪れて、住み慣れて
目新しくなくなったこの土地の良さをもう一度再発見させてくれる機会ともなった。
住めば都という言葉もあるが、隣の芝生は青いという言葉もあるように、住めば住む程、
馴れ合いもあり、他の場所が良いような気がしてくるものである。
時々この地を初めて訪れる仲間とともにもう一度自分の住処を見直すことは大事である。
ずっと登っていなかった目の前の小山モンテ・ゴンツィにも3回登った。昔はときどき
季節ごとに登っていたものである。そして散歩の終盤に飲む湧き水の美味しさ。
これも久々の味わいである。
すべてが友人達のおかげで新鮮な体験となった。

そして今年の新たなる発見はヤモリの家族である。
真夏の長い夕べを過ごすテラスの壁の灯りの光とともに現れる神秘的な生き物。
イタリア語ではgecoと呼ばれる。やもりの漢字は「家守」と思っていたら「守宮」と書くことが
わかり、なんとなく納得。家を守り神、という伝説があるが、宮を守る、というほうが神聖な感じがする。この夏、夕食後に灯りをともすとどこからともなく出現する4匹のいもりたち。
一番大きいのは父親だろうか、中ぐらいの母親、そして子供の小さい2匹、勝手に家族と決めた。
毎晩顔をだしてそして灯りにたかる小さな虫や蛾を食べるその素早い動き。
なんとなくこちらの様子を伺っているかのような視線。毎日出てくるとほっとする。一匹でも欠けていると、さてどうしたものか、と心配になる。
9月4日の満月を境に急に涼しくなった朝夕。夕べをテラスで過ごすこともなくなったためもあり、やもり一家との対面もあまりない。というより一家も冬に備えて暖かい住処に移住したのかもしれない。
夏の象徴のようなやもりが夢のごとく消えた跡、それは秋の訪れを語っているのだろう。
一抹のメランコリーをともなって。

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by jamartetrusco | 2009-09-09 21:32 | Vita (人生)
2009年 09月 02日

ピサの斜塔が最も美しく見える処

ピサのCampo dei Miracoli, 奇跡広場はその広々とした空間に芝生に囲まれて大聖堂、
洗礼堂、かの有名な斜塔、そしてカンポサント(墓所)の4つのモニュメントが一挙に
集まる。海に近いせいかどこか開放的な空気と青い空にむけて立ちそびえるこれらの建物は
下を歩く観光客の雑踏など我関せず縁のようである。
フィレンツェの石造りのシニョーリア広場が壮年の賢さを持ちながらも閉鎖的で内向的な
感があるのに対して、この広場は青年のエネルギーあふれる希望と開放感に満ちている。
15世紀にむけて力を集結してトスカーナを制覇していくフィレンツェを京都に例えるなら
12〜13世紀海港都市として大きな力をもったピサはどこか奈良のおおらかさがある。
喩えは極端であるものの。どちらが好きな広場かと言われば文句なしにこの奇跡広場である。
いつ訪れてもこの広場の美しさには目を奪われる。白い建築物の堂々たる姿と雄大な
広場空間の調和と共鳴感は類い稀なものである。
さて今回斜塔がもっとも美しくみえる穴場を見つけた。
収蔵品に有名な作品がないためか人気も少ないドゥオーモ美術館の中庭である。
夏のぎらぎらした太陽と観光客の雑踏をさけて静かに斜塔の絶景を望め得る一角である。
修復中の被り物のせいで建築の全体の美しさがやや損なわれているものの、斜塔の
姿を最高の角度にて独占できる。
美術館自体も元僧院であったに違いない構造で美しい。
2階の回廊の石のベンチに腰かけて斜塔を眺めるその満足感。
なによりも静けさの貴重を感じる。



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by jamartetrusco | 2009-09-02 15:11 | Paese (土地柄)