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2012年 09月 28日

海と空の交わるところ

イギリス南西端、セントアイブスに2〜3日滞在してきた。もう20年近く前に一度だけ訪れた海の街。
当時はまだバーナード・リーチの最後の奥様が健在で日本から訪英され、師匠を辿るイギリス陶芸探求の旅
に来られていた陶芸家の方と一緒であった。
ロンドンから7時間かけてやっと辿り着いたセントアイブスも冬の薄暗がりの中にあまり印象がなく、リーチの
工房を訪ねただけで帰ってきた記憶しかない。

今回の訪問はイギリスでは「インディアン・サマー」の誉れ高い9月。7、8月よりも暖かいことの多い月
であるのでまた違った景色を見せてくれるだろうと期待していた。
暖かい、という日和とはほど遠かったものの、雨にも降られずお日様も時々顔をみせてくれた。
セントアイブスのリーチポタリー工房に短期滞在されている陶芸家のご夫妻を訪ねるのが目的のこの旅。
セントアイブス・テートも開館してすでに20年近い。

セントアイブスの景色の素晴らしさはやはり海の存在が大である。広々と開ける海岸線、黄色がかった白の
砂浜と対照的な真っ黒の岩の群れ。透き通った濃い青色の海はケルト海の大海原への地平線はるか彼方へと続く。
地中海の水の色に慣れた目には闇をたたえたかのこの海水はとてつもなく深い青。
一年中水温は上がることはないだろう、その冷たさを威厳として人間をよせつけない怖さと美しさがある。
人の作為に犯されていない強い海である。
潮の満ち引きによってあっという間に砂浜が広がり、またあっと言う間に岸まで海のさざ波が打ち寄せる。
海のなくてはならない相棒は空高く飛び交うカモメだけとも映る。

雨が今にも降りそうで降らないどんよりとした曇り空。
その雲までがこの海と空との大切な一線をわきまえて互いの空間を緊張感を持って保っているように
見えた。
イギリスがターナーを生んだ国であることの所以を感じさせる。

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by jamartetrusco | 2012-09-28 23:24 | Natura (自然)
2012年 09月 09日

フィレンツェを包む

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少し前のブログでも紹介した塩谷氏の「ひとてま」プロジェクト。
インスタレーションの最後を飾ってフィレンツェを一望できる屋敷の屋上にて一時の間、
「ひとてま」が出現した。滞在する間にすこしずつ、しかし着実にその数を増やしていった人の握手の象。
屋上の煉瓦の床の意匠がまるでこの大きな円のために存在したかのように端正な形を
見せてくれた。
まさに日の沈む寸前の黄昏時のイベント。アペリティーヴォのひと時をこの素晴らしい
屋上の持ち主であり、塩谷氏の友人である画家の彼が近く帰国される塩谷氏へのオマ−ジュ
として見事に演出してくれた貴重な一時。

夕日とアルノ河と河を超えたフィレンツェの大聖堂のクーポラと、そして360度見渡せる
パノラミックな美観と、最後の夏の暑い太陽に温められ自然熱を蓄えた石壁と煉瓦と
を一挙に手中にして、夕焼けにやや染まって並ぶ手の握手の陶片はその円形に巡りめく
人々のエネルギーを集結して回る 惑星、ミクロコスモスのように厳かに回りを包みこんで
くれるようであった。人間が太古から自然の形象や暁と黄昏をあがめる儀式にも似て。

さて日本に帰ってからどこに現れるのだろう。
表現はひとつの時空間から次の時空間に移り行く終わりなき過程としてwork in progress-
進行中である。またそれぞれの陶片がひとつずつ完結しながらも全体の大きな円の
一部をなすという意義。
そして置かれた回りの環境や空気、色彩を反映する焼き物の白い繊細な形のハーモニーが
とりわけ美しい。

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by jamartetrusco | 2012-09-09 22:19 | Arte (芸術)