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2006年 04月 06日
キャンティに住み始めて困ったことのないのは赤ワインの入手です。といっても私たちを含め、地元の人々が買うのはボトルに入った市販のキャンティ・クラシコではありません。リットル単位でdamigiana (ワインを入れる底太の瓶、下写真)持参で、ワインを作る農家に買いにいくのです。そして家に帰ってから1本1本ボトルに入れ替えます。その際酸化しないようにワインのための食用の透明オイルを半センチほど入れて保存します。飲むのときにはそのオイルはもちろん取り除きますけれど。 ![]() 1994年、12年前のワイン1リットルの値段はなんと1700リラ(当時の換算で100円前後)、まさに水より安い。今ではキャンティ・ワインブームのあおりとユーロの導入で1リットル2ユーロなどというのは珍しくなくなってしまいました。とは言っても300円弱ですが。 この農家で作られボトル詰めすることなくリットル単位で売られるワイン(vino sfuso)はなにが特別かというと、店頭で売られたり、輸出されたりするためのボトルワインに不可欠な酸化を防ぐための加工がされていないので、完璧に自然な状態の葡萄酒なのです。ですから度を過ぎるぐらい飲み過ぎても悪酔いをしない(というわけで私たちもちょくちょく飲み過ぎる)。味もどこか葡萄の自然味を残した荒々しい風味があるのです。農家によってまた味も度数も違います。 私たちの行きつけは今のところ2軒あり、ひとつはキャンティクラシコの地域から少し外れたところの街Cerbaiaの近くの農家。味は全くキャンティワインと変わりませんが、値段が1リットル1.5ユーロということで少し安いです。ワインをつくるご主人、その奥さんで売ってくださるお母さん、その娘さん一家、皆同じ屋根の下にお住まいです。 もう1軒はモンテフィオラーレ近くの農家、Falcole. 昔から顔なじみだったものの、ワインを売っているとは知らずに素通りしていたのですが、最近寄るようになりました。そこのご主人は土と自然を相手に仕事をしてきたというなんとも力強いワイルドな風体の方で(私とアレの間で通称Indiano、インディアンと呼んでいた)、話をしてみたらエトルリアや地元の歴史に詳しく、アレと気が合ってしまいました。またオリーブの木の剪定の名人だそうで、何か山の主のような方です。トスカーナの農家の人たちが魅力的なのは大地と自然の中から得られる知恵にあふれていることです。皆一癖も二癖もあって絶対に自分が正しい、譲らないというような気骨があります。その分気難しいところもあるので、彼らの領域を侵すべからず。 作る現場の人々の顔が見え、彼らのこだわりを語ってくれるとてもパーソナルな味のするワインです。でもどんどん馬鹿げたヨーロッパ共同体の法律が入ってきて、その内にこんな個人的な小世界も消え去っていくのかもしれません。そして昔ながらの手農業のテラス式葡萄畑(terrazzamento)を営む人も減ってきて、大きな資本が入り、トラクターを導入した大量生産型の葡萄畑に代替されるようになっているのが現状です。Terrazzamentoが崩されるのを目の当たりにする度にアレは"Maledizione degli Etruschi!"ー「エトルリア人の呪いがふりかかるぞ!」と怒っています。グローバリズム反対! Microcosmo万歳! ![]() ![]() 人気blogランキングへ
by jamartetrusco
| 2006-04-06 23:00
| Cibo (食文化)
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