2006年 09月 09日
フィレンツェにある数多くの美術館、博物館の中で、動物学や解剖学に興味のある方は欠かせないLa Specola。今回で2回目の訪問だ。普通の日は9時から1時までしか開館していない。水曜日は休館。土曜日はさすがに最近では5時まで開いているので家族連れも行きやすくなった。 世界で有数の自然史博物館の生物の剥製のコレクションに勝るとも劣らない収集品を持つ。無脊椎動物、爬虫類、両生類、魚、鳥、哺乳動物。そして今では絶滅してしまった類まで含め、広範囲に渡るコレクションには目をみはる。展示されているもの以外に3百万種が収蔵されているとのことである。なにしろ18世紀の後半から始まったコレクションであるから当然の数であるかもしれない。ただイタリアの美術館や博物館が常なるように解説が少ない。どの展示ケースもそれぞれの種の学術命名が書いてあるだけなので、よくわからないのが難点である。要するに視覚に訴えるのみ。それでも古めかし木製とガラスの展示ケースはいかにも当時の博物館さながらで、趣きはあるが、せっかくのコレクション、少しさびれた感じが残念だ。 さて、海の生物、鳥はやはり個人的に最も興味を引かれる分野である。特に鳥類の展示室は圧巻でところ狭しと色合い様々な鳥達がケースを埋め尽くしている。それは見事である。 鳥恐怖症の方は失神ものだが。 哺乳類の部屋は剥製の状態が古く完璧でないせいか、なんだか禿げかけたぬいぐるみを見るようでなんだか痛々しい。ただ猿の種類が驚異的に多い。形相が凄まじく怖い感じ。夜間、人気がないときに迷い込んだらさぞ悪夢。 そして以前の記事で紹介した7月の海辺にて発見したウニの殻。ありましたよ!ここにも。学術用語Diadema Setosum。なんだか嬉しかった。 そして貝殻のみで作りあげた薔薇の造花。あまりにも珍しいので画像に収めた。 しかしこの博物館の圧巻はなんといっても解剖学の部屋。ここは血や内臓、生皮剥がれた人間、などなど苦手な方にはおすすめしません。とにかく人間を形作るすべてが解剖されて目の前に置かれているのである。最近、世界を巡回したドイツ人ギュンター・フォン・ハーゲンの発明である”Plastination"された屍体を展示するThe Body Worldsという展覧会があった。特殊な方法で保存された人間の屍体を解剖学的な見地から見せるのであるが多少猟奇的に走りすぎていて賛否両論あった。彼はLa Specolaを訪れたに違いない。 La Specolaの解剖学展示の模型はすべて蝋でできており、18世紀後半から19世紀初頭にかけて彫刻家、版画家であるクレメンテ・スシーニ(1754~1814)が中心になって作成したもの。筋肉の一本一本、細胞のすべて見事に蝋にて再現されている。あまりにもリアルで強烈なイメージである。医学生にとっても興味深い資料であろう。 興味のある方はcere anatomicheのサイトを検索して頂ければその内容がよくわかる。 さらにコレクションの中で卓越した17世紀の奇怪で美しい蝋細工の彫刻。シチリア出の蝋細工師のガエターノ・ジュリオ・ズンボ作。疫病による人間の変貌を象ったグロテスクであるが芸術性の高い3組の小品である。 17世紀の死と幻想的なロマンティシズム溢れる時代性から生まれた産物であろう。
by jamartetrusco
| 2006-09-09 03:54
| Natura (自然)
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