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2007年 03月 18日
作家が自画像を残すことは珍しいことではない。 しかしこれはあくまで近代以降の現象とも言える。中世以前の画家や彫刻家の肖像は記憶にある限りあまりない。ましてギリシャ時代なども彫刻家の名前は知られていても顔まではわからない。ルネンサンス期を境に作家が自身を描く例が突然と増えてくる。やはり近世以降の自我の目覚め、そして作家の自己認識の表れなのだろう。 ボッティチェッリもその「東方三賢人の礼拝」の絵の中で右端に立つ人物像として自画像を残している。(ちなみに彼の左側に立つ黒髪の美男は後に殺害されるロレンツォ豪華王の弟のジュリアーノとされている) ![]() その場合必ず他の人物の姿勢や目線はそれぞれ空間に統一する方向性もつのに対し、画家は必ず相対する観衆を意識するかのようにこちらを直視しているのである。 それ以外に故意に自画像を時代を追って残していく画家もいた。ドイツの15世紀の画家、アルブレヒト・デューラーもその一人である。生涯にわたりなんと50あまりの自画像を残しているそうだ。 ![]() ![]() 13歳のときに初めて描いた鉛筆画の素描の自画像に始まり、その後立て続けに22歳、27歳、29歳の自画像の油絵を描いた。いずれもデューラーの代表作である。特に29歳のときの自画像は今回のミュンヘンのアルテ・ピナコテーカにて初対面できたのであるが、キリストに自らをだぶらせた圧倒的な精神性が感じられる。オランダ17世紀の画家レンブラントも若きから老いに至るまでの自身を描き続けた。 自画像の中にはしかしあからさまな形式でない例もある。フラマン派の15世紀の画家ヤン・ファン・アイクはその傑作「アルノルフィーニ夫妻の肖像画」の画中、鏡に移った姿として絵の背景にひっそりと自身を写しだしている。 ![]() 鏡の上にはラテン語の装飾文字にて「ヤン・ファン・アイクはここにありき,1434年」と書き残している。鏡に映し出された二人の人物の一人が彼とされている。 そしてフィレンツェ、16世紀マニエリズムを代表する金工家、画家、彫刻家のベンヴェヌート・チェリーニ。彼の残した自叙伝はあまりにも有名で、その破天荒でエキセントリックな性格や人生を如実に読み取ることができる。彼の自画像はやはり彫刻に隠れて残されているが、これは案外知られていない。 ![]() ![]() フィレンツェのヴェッキョ宮まえにあるロッジャ・デ・ランツィに置かれている「メドゥーサの首をかかげるペルセウス」の彫刻。前から見ると精悍なペルセウスがメドゥーサの首を高くかかげて立つブロンズ像である。しかし後ろまで回って見る方は少ないであろう。 ![]() なんとチェリーニ自身がぺルセウスのヘルメットの陰に浮き上がってくるのである。まさにだまし絵の世界に近い。さすがチェリーニの大胆な発想。 もうひとりフィレンツェの巨人、ミケランジェロも奇想天外な自画像を残している。 システナ礼拝堂内の「最後の審判」に描かれる皮を剥がれた聖バーソロミューはミケランジェロその人に他ならない。 ![]() 最後に自画像とは言えないかもしれないが、「だまし絵」的な面白さとアナモルフォーシス(歪形)の代表として有名なハンス・ホルバイン(以前にも紹介した)の「大使」。 ![]() この絵は駐英フランス大使と司教の二人の立つ肖像画であり、背後に描かれている静物の意味について論議が多い絵であるが、何と言っても目を惹くのはふたりの真ん中にあって不可思議に浮かぶ物体である。まっすぐ見ても形が即解明できないように歪曲(アナモルフォーシス)されており、画面を斜に眺めるとこれが頭蓋骨であることが判明するように描かれているのである。 ![]() 何故頭蓋骨が描かれているのかの論議はさまざまで、画面に描かれるさまざまな要素から、この絵の主題は天上の世界、人が生きる現在、そして死の世界の3つのレベルを表すという説がある。いずれにせよ死を示唆するメメント・モリーmemento moriー人とは死するものなりーであることは間違いない。しかし、これが同時にホルバインの名前の署名に他ならない、という説もある。ホルバインーHolbein−は英語でHollow Boneー虚ろな骨ーの意であり、故に頭蓋骨を表すことによって自身の署名としている、というのだ。 本当だとするとこれも一種の隠れた自画像の一種と言えよう。 自画像とはやや違うが、フィレンツェのヴェッキョ宮の前に立って右端に人知れず顔が彫られているのに気づかれた方はいるだろうか。この顔、実はミケランジェロがどれだけ彫刻家としての技に長けているかを証明するために前を向いたまま後ろに手を回して彫ったというのである。あまり信憑性はないがルネンサンスの天才にまつわる逸話として説得力あるひとつの伝説である。 ![]() 余談: この週末はわが町モンテフィオラーレにて、春の訪れを告げる3月19日のFesta di San Giuseppe(聖ヨハネ祭)に合わせて恒例のフリッテッレ菓子祭りが開催されている。 お米ベースのこの揚げ菓子、それはそれは美味。これを食べないと春が始まらない気がする。 そして去年のちょうどこの祭りの次の日から拙ブログを開始したことを想い起こした。 (Moさん、新ためてありがとう!) ということで3月20日にてブログ1周年。早いような色々あったような1年であった。感慨無量なり。 ![]()
by jamartetrusco
| 2007-03-18 02:17
| Arte (芸術)
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