2008年 04月 07日
カシミール・マーレヴィッチの四角、丸、十字。 すべてを極限にまで極めた形である。 そこにはあるがままに見える円と四角と十字があるのだが、その背後に揺らめく 精神性がある。 マーレヴィッチはシュプレマティズムという美学の唱道者である。 真の芸術、芸術家というのは人間の目に見える客観的自然、客観性を表現するのではなく己の中に捉えられる主観的感情、情緒、心の様を自身のプリズムを通してひとつの非客観的形に具現化するものである、と彼は唱えている。 故にその表現は一般的には理解の域を越えるものであることが多く時代を先行する表現である。シュプレマティズム宣言と副題のある彼の思想を語った著作「非客観的世界」はカンディンスキー著の「芸術における精神性」についての思想に通じる抽象表現のバイブルのようなものであろう。 ロシア国立所蔵展の多くの作品を見て、最後の展示室にあったこの3点。 文句なしに最も力強く、精神性、宗教性あふれる作品である。 微妙に歪みのある黒の四角が白の背景に描かれている1メートル四方の油彩作品、"Black Square on White"。 マーレヴィッチがイコンの代わりに部屋の最も神聖な場所に飾ったと言われている 自身の抽象絵画。 心の有り様がひとつの形と成り代わる瞬間の芸術の不思議である。 実に納得が行くのである。 どこか禅画の墨絵にある一筆に現れる宇宙の巨大が感じられるのである。 底なしの心の様を2次元の表現に表したとき、それはひとつの色彩となり、線となり、 形のなるであろう。 純粋なる抽象ー心の投影ーのエキスであると思う。
by jamartetrusco
| 2008-04-07 21:14
| Arte (芸術)
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